バナナ形以外の液晶
これまで研究してきた液晶系の研究は多岐にわたる。いくつかの分野に分けると次のようなものがある。簡単に説明する。
- コレステリック液晶
コレステリック液晶の光学的性質を詳細に研究し、斜入射に対しては選択反射に加えて、偏光によらず、すべての光を反射する全反射領域があることを見出した(1982~)。このころの研究はSHGの特殊位相整合(1998~)、フォトニックデバイス(2003~)の研究へとつながっている。
- 強誘電、反強誘電性液晶と副次相
表面安定化強誘電性液晶の研究において、ジグザグ欠陥の構造を明らかにした。また、ツイスト構造を詳細に検討した。このような研究の過程で、反強誘電性液晶に巡り合い、3安定状態間スイッチングを用いた高速ディスプレイデバイスを提案、特性評価した(1988)。その後、この相が反強誘電性液晶であることを発見した(1989)。反強誘電性液晶は2層周期のジグザグ構造であるのに対して、3層周期、4層周期のフェリ誘電相があることも併せて発見した。この分野は、その後、液晶の大きな分野を形成するに至っている。
- 液晶表面の科学
液晶が処理表面上でどのように配列構造を形成するのか、ラビングや光配向表面処理の強さと液晶の配向分布関数はどのような相関があるのかを、SHG、SHG干渉法、UV-VIS吸収、NEXAFSなどの実験結果と最大情報エントロピー法を用いた解析により研究した。
- その他の研究
ジキラル化合物をYoshizawa(現弘前大)、Kusumoto(現DIC)らと共同研究し、キラル認識によると思われるキュービック相を見出した。
光重合性液晶を用い、スイッチング可能な回折格子を作った。
Watanabeとの共同研究で、2つの液晶系で極性ネマチック相を確認した。これらはポリペプチド、芳香族ポリエステルの剛直な高分子液晶であり、直接型強誘電体であると考えられる。
- スイッチング可能なカラムナー相
Gorecka(ワルシャワ大)、Kishikawa(千葉大)との共同研究で極性スイッチング可能なカラムナー液晶の研究を行った。それぞれ、バナナ形液晶、ウレア誘導体の形成するものである。前者の中には誘電応答から、フレクサー挙動と思われる現象を観測した。また、後者ではカラムナー液晶系で初めての等方相でのカー効果を観測した。