※ 周期表をカラーで打ち出して持って行くこと。提示装置を使って示すと黒板に描く必要なし。

※授業評価アンケート

 

化学第2第13回(2月03日:授業ノート)

浸透と遮蔽

 主量子数が2の軌道にはl=0のs軌道とl=1のp軌道がある。水素原子においては、両者のエネルギーは等しく(つまり縮退していた)、それからすれば、リチウムの3番目の電子はどちらに入ってもよいことになる。しかし、多電子原子においては、考えている電子以外の電子によりエネルギーの変動があり、s軌道とp軌道ではエネルギーが異なる。(縮退が破れている)。では、s軌道とp軌道でどちらの方がエネルギーが低くなるだろうか。それを考えるためにリチウム原子のイオン化エネルギーを当たってみよう。リチウムは3価の原子核を持つ。それ故に、水素原子のエネルギー準位の式を用いると主量子数が2の軌道のエネルギーは

より、水素原子の1s(n=1,Z=1)のエネルギーが13.6eVなので30.6eVである。これは真空準位からのエネルギーなので、これだけのエネルギーを与えれば電子が放出されるはずである。一方、別の考え方として、リチウム原子では1s軌道に電子が2つ入っているので主量子数が2の軌道が感じる核の電荷はプラス1価であるので、主量子数が2の軌道のエネルギーは上の式にn=2、Z=1(2価分は1sの2つの電子でキャンセルされるから)を代入して、3.4eVであるはずと考えることもできる(高校までの原子核の回りを電子がまわるモデルでは、この考えで正しいはずだ)。さて、現実のリチウム原子での電子放出のエネルギーは5.39eVで、z=3とした場合に比べると遥かに小さいがZ=1の価よりは大きくなっている。式に無理に当てはめるとZ=1.6程度になる。

 このことは、主量子数が2の電子にとって、原子核の電荷は、1sの電子によりかなり遮蔽されているけれども、その遮蔽は完全ではないことを意味している。なぜ遮蔽が完全ではないかと言えば、主量子数が2の軌道の電子も原子核の近傍に有限の存在確率を有しているためである(浸透)。この領域では1sの電子による遮蔽は有効に働かず、裸の原子核の電荷に近い電荷を電子は感じる。

そこで、1sと2s、2pの動径分布関数が原点付近でどうなっているかを調べてみよう(こういうときは動径波動関数で描いてもだめだ。大体、2pの動径波動関数を1つの軸で書き表すことなんてできない) 。

図では(この図は明らかにおかしい。動径分布関数は波動関数の2乗なので、正の値にしかならないはずである。このグラフはどうやら、波動関数×r2を記してしまっているようである) 1sの動径分布関数の最大価がr/ボーア半径が1の場所にないが、これはZとして3を代入したためである。2sと2pで最大確率密度を与える半径が2sの方が広がっていることに注意しよう。一般に主量子数が同じ場合は(それぞれの軌道が存在すれば)、最大確率密度を与える半径はs>p>d>fとなっている。このことは、単純には、2sの方が2pよりエネルギーが高くなりそうな印象を与えるかもしれないが、最大確率密度を与えるのは、1sの軌道の確率密度が十分に小さくなった領域でしかなく、この程度の差はエネルギーには、それほど大きくは影響しない(と思う)。それよりは、これまでの議論を思い起こせば、1s軌道の内側に、どれかで入り込めるかが重要なのである。

原点付近を注視すると、1s動径分布関数が最大値をとるあたりより原点側では2s軌道の価の方が大きいことが分かる。つまり、2s電子の方が2p電子よりも原子核のそばにいる(そして、1s電子で遮蔽されていない3価に近い電荷を感じる)確率が高いことが分かる。このように外殻の電子が内殻電子の内側に入り込むことを浸透という。

 s軌道とp軌道のエネルギーの大小に戻ろう。浸透の差異の結果、s軌道の方がクーロン利得が大きく、p軌道よりエネルギーが低くなる。つまり、多電子原子では主量子数が2以上の軌道の縮退は破れていて、s、p、d、f軌道のエネルギーはもはや同一ではない。

ベリリウム原子

 ベリリウムの原子核は4価で4つの電子を持っている。構成原理通りに1sに2個、2sに2個電子が入る。それぞれのs軌道の電子のスピンは逆方向を向いている。 

ボロン原子

 ボロン原子になると、ベリリウムにさらに1個の電子を加えなければならない。2s軌道には既に電子が入っているので、パウリの排他原理より3つ目の電子はp軌道に入らなければならない。どのp軌道に入るかは、任意である。

ここで、ボロンのイオン化エネルギーを見てみると、ベリリウムに比べて小さくなっている。イオン化エネルギーは一般には主量子数が同じグループの範囲では原子核の価数が大きくなるほど大きくなる傾向にあるが、s軌道とp軌道ではp軌道の方がエネルギーが高いために、ボロンのイオン化エネルギーはベリリウムよりも小さくなっている。

 一般に主量子数が同じ軌道の間では、原子番号が大きくなるほど核の電荷が大きくなるので、電子は核から、より強い引力を受けることになり、その結果として、イオン化エネルギーが高くなる。しかし、上に示したように、s軌道が塞がりp軌道に入るときなどは、軌道間のエネルギー差により、イオン化エネルギーの逆転が起こる。リチウムからネオンの系列を見ると、ベリリウムとボロンの外に窒素と酸素の間にも逆転が生じている。それが、何故生じるかについては改めて説明する。

カーボン原子

 ボロンの次は炭素原子である。新に加わる1個の電子がどの軌道にどのように入るかは、結構難しい問題になる。2s軌道は塞がっていて、2p軌道には残り5つの空きがあるので、空いているp軌道に電子が入ることは間違い無いのだけれども、その5つには優先順位がある。これからの議論をやりやすくするために、取り敢えず、1つ目の電子はpx軌道に入っていることにしよう(別にpyでもpzでもいい、最初の1個が入るときにはこれらは等価だ)。この状態にもう一つ電子を入れる場合に、px軌道とpz、py軌道の間には明らかに違いがある。というのは平均的な電子間距離を考えると同じ軌道にいるよりも、異なった軌道にいる方が平均して距離が遠くなると期待できるからである。これより、px軌道に入るより、pzかpy軌道に電子が入る方がエネルギーが低いと期待できる。pzとpyは等価なので、ここではpy軌道に入ることとしよう。
 これで話は終わりにはならない。だいたい、ここまでの話だったら「結構難しい問題になる」という上の台詞は嘘になってしまう。さて、電子にはスピンがあることを思い出して欲しい。2つの電子のスピンがどのようになるかは、軌道が異なっていても考えることが可能である。カーボンの電子配置としては、1s↑↓、2s↑↓、2px↑、2py↑と1s↑↓、2s↑↓、2px↑、2py↓の2通りが考えられるのである。古典的には、これら2つの状態がエネルギー的に異なったものになると考えることは難しい。しかし、量子論の枠組みでは、これら2つの状態はエネルギー的に異なっており、実際の炭素原子の基底状態(最低エネルギー状態)の電子配置は1s↑↓、2s↑↓、2px↑、2py↑となることが知られている。これはフントの規則と呼ばれるルールである。

スピン相関とフントの規則

 フントの規則は、パウリの排他原理と関連している。ここでは順を追ってフントの規則が出現する理由を説明することにする。

先ず最初に重要なことは、電子がフェルミ粒子であるということである。そして2番目に重要なのは電子が1/2のスピンを持っており、空間的に2方向に配位できることである。

最初に、スピンのことを考えずに、粒子の波動関数だけを考えることにしよう。取り扱うのは、毎度おなじみの一番シンプルな井戸型ポテンシャル系である。さらに簡単にするために、粒子には電荷はなく、クーロン相互作用(それ以外の相互作用も)考えなくてよいことにしよう。

この時、粒子1,2をそれぞれある場所x1,x2で見つける確率は、粒子1を位置x1で見つける確率に、粒子2を位置x2で見つける確率を掛け合わせたものになる。これより、2粒子の波動関数は

となる。2つの状態は区別がつかないので、実際の状態は2つの線形加算となるわけである。そして、フェルミ粒子の場合には、粒子の入れ替えにともない、波動関数の符号が反転するので、波動関数は

となる。少し前の授業でフェルミ粒子の入れ替えに伴う話をしたときに、かけ算の和と単純な和の場合が合ったけれど、実際には単純な和と見えた物は(書き方が悪かったわけだけれど)関数の積を簡単に書き記した物だったのである。

さて、2つの粒子がともに基底状態にいる場合には2つの波動関数の差は0となる。それを(後の都合もあって)グラフィカルに示すべく、2つの粒子の波動関数を2つの軸を使って(この軸は、1次元の井戸型ポテンシャル中の粒子を考えているのだから、実空間では同じ方向に伸びている。しかし、仮想的にそれぞれに粒子に直交した軸を与えることはできる。)示してみると粒子の最低次の波動関数は

なので、2次元の井戸型ポテンシャルの最低準位と同じような絵になる。

 

粒子を入れ替えた波動関数の絵もまったく同じ形状になり、その結果として両方の差をとるとΨa=0となるのである。

 

※2つの粒子を入れると0になるのに最初の1個目はどうして入れられるのかという質問があったけれど、2つの粒子が存在できないのは2つの粒子の干渉の効果だからで、1個の粒子だと干渉は生じないから、存在していられる。

一方、これがボーズ粒子だったら、2つの波動関数の和となるわけで、その場合には有限な値の波動関数が得られる。

しかし、1/2のスピンを粒子が持っていると、最低状態には2つの粒子が存在できる。このことは、上記の波動関数が加算的に組み合わされた状態をとりうることを示している(そうでないと2つの粒子は存在できない)。それがパウリの排他原理と矛盾しないためには粒子のスピンの項目も波動関数に取り込む必要がある。

ここでは詳細は割愛するけれども、波動関数のスピンに関する部分が、粒子の交換にともない符号を変化させれば、軌道に関する波動関数の部分は符号を変化させてはいけない(そうじゃないと、マイナス×マイナスでプラスになってしまう)。一方で、スピンが同じ方向で入る場合が存在しないことは、スピンが平行になっている場合にはスピンの波動関数は粒子の交換に対して符号を変えず、従って、軌道に関する波動関数が符号を変えなければいけない(その結果として干渉して打ち消すことになる)ことを示している。

 

ここまでは、2つの粒子が同じ軌道をとる場合である。しかし、2つの粒子が異なる軌道を撮っていると事情が少しばかり異なる。そこで、片方の粒子がn=2の状態に励起された場合について考えを進めることにしよう。

なのだけれども、この波動関数は2次元的に描くと異なった状態となっており、これは、粒子の区別がつかないという事実に反する。粒子が区別がつかないという事実に合致する波動関数はこれら2つの波動関数から構成される

である。これを図示すると

 

となる。これは2次元の図示であるが、もともと、1次元の箱の中の話であるので、この対角線上は2つの粒子が同じ場所にいることを意味し、対角線からずれるほど2つの粒子が離れた位置にいることを示している。

2つの波動関数を比べるとΨsでは対角線上の値が大きくなっている。一方Ψaでは対角線上の値は0で粒子は互いに離れた状況にあることが分かる。このことと、先ほどの基底状態でのスピンの議論を結びつけると、スピンが揃っている時には軌道の波動関数はΨaで、スピンが逆向き(反平行)の場合は軌道の波動関数はΨsであると結論づけられる。

これは、スピン相関と呼ばれる現象で、スピンが反平行(矢印の線は平行だけれど矢印の向きが逆)の粒子は互いに近づいた状態で存在しがちで、平行な場合には離れて存在しがちなのである。ここまででは2つの状態の間にエネルギー差はない。しかし、粒子が電子となると話は逆だ。電子は電荷を持っており、電子同士が近づくとクーロン反発によりエネルギー的に高い状態になる。これとスピン相関が結びつくと、異なる軌道に電子がいる場合に、電子のスピンが平行の場合の方が電子がお互いに離れていてクーロンエネルギーによるエネルギー上昇が少ないので反平行の場合に比べてエネルギーが低いと結論できる。

これがフントの規則の背景にあるものである。

窒素原子

 炭素に電子が1つ加わる時には、まだ使われていない最後のp軌道に電子が入る。そして、その電子のスピンは他の2つと平行になる。

酸素原子

 窒素までで3つのp軌道に電子が1つずつ入っているために、酸素の最後の電子は3つのp軌道のいずれに入っても良い。この時、その軌道に存在する電子とは反対のスピンを取らなければならない。同じp軌道に電子が入ると、それ以前の軌道に一つずつ電子を入れていった時に比べると、電子間の反発が大きくなるはずである。このことは、確かに起こっていて、酸素原子のイオン化エネルギーがボロン、窒素とつながる外挿よりも下にずれている。

フッ素原子・ネオン原子

 フッ素原子で残りのp軌道の片方に電子がつまり、ネオンで最後のp軌道にも電子が詰まる。これで、全ての2s、2p軌道に電子が2つずつ詰まっており、それ以上の電子を詰めることができなくなり、2p軌道は完全にふさがっている。この状態を閉殻という。

 

周期表

 ここまでの話をすれば、周期律表とは何もので、どのような構成になっているのかが大体分かってきたのではないかと思う。最初の列に水素とヘリウムしかないのは、これがk殻でl=0のs軌道しか存在しないためである。次の軌道は主量子数が2で、l=0と1がある。l=0は2sで1つあり、l=1は2pで3重に縮退している。主量子数が2の最初の2つがs軌道がつまっていく過程であり、ボロン以降の6つがp軌道を埋めていく過程である。

 ナトリウムからはn=3の軌道になる。最初の二つはリチウムからと同様にs軌道が、次の6つがp軌道が埋まる過程である。ではd軌道の10個はというと、構成原理の所に示したように、エネルギーが4sより高くなっており、次の巡り合わせになっている。そこで、次のカリウムからの軌道に目を転じよう。

 カリウムからはn=4の軌道のはずである。最初の2つは4sがつまる過程である。そして、ここで突然に遷移金属と呼ばれる一群の元素が出てくる。これが、実に、3dが埋まっていく過程である。そして、3dが埋まると、4pが埋まり出す。これが、ガリウム、ゲルマニウムと続く過程である。そして、4d軌道のエネルギーは高いために次の、ルビジウムから始まる第5周期に送られることになる。

 主量子数が4の場合には、回転量子数は3間でとれるので、f軌道も存在するはずである。では4f軌道はどこにはいるのかというと、構成原理によれば6sの後であるという。主量子数が6の並びはセシウムから始まっている。この連なりをみると、これまでと少し違っていて、アルカリ土類金属のバリウムのとなりに、ランタノイドと記された一連の14個の原子が入っている。これが、4f軌道に原子が埋まっていく過程である。

 という訳で、教科書にも載っている周期律表をここでお目にかけよう

それぞれが、どこの軌道が埋まっていく過程であるかは色で区別して示した。水色がs、黄色がp、緑がd、そして紫がfである。f電子の軌道数は7なのでf電子が埋まっていく過程では14個の原子があるはずだが、このあたりはエネルギー的に微妙なところがあり、教科書の図では15個の原子をまとめてランタノイドとしている。

一般的な周期表ではf電子は別格に描かれているが、論理的には同格にして図の中に混ぜ込んでもいいはずである。ただし、そんなものを作ってみると

となかなか、見にくい物となる。通常の周期律表が使われるいわれである。

歴史的には、このように妙に長い周期律表よりも、幅の狭い短周期の周期律表の方が用いられていた

この周期律表は基本的に1族から8族になり、1〜7族は内部が2つに分類されている。この表は、化学的な類似性をかなりの根拠としている。実際、この表の方が例えばカルシウムとカドミウムの類似性が感じられるのではないかと思う。

 

原子はどうやってできるか

 周期律表には100以上の原子が掲載されている。これらの原子は、一体どうやって作られた物なのだろう。現代の標準的な理論によれば、これらの原子は2つのプロセスにより形成されたと考えられている。

 まず、最初のプロセスは宇宙の始まり時である。宇宙は、非常に小さい領域が爆発的に拡がって誕生したと考えられている。いわゆるビッグバン(大爆発)により誕生したのである。最初はエネルギーが高すぎて、今見られるような原子はまったく存在しない。加速器の中や、あるいはそれでも作り出せないような素粒子がうごめいていたはずである。膨張にともなって、宇宙の温度が下がり、それにともない、現在存在している電子や陽子や中性子などが出現した。しかし、陽子と電子がクーロン力によりペアーを作り水素原子として安定に存在するのには温度が高すぎるため、これらの素粒子は結合することなく動き回っていたと考えられている。なお、この高密度の状態(の最初の方で)2つの陽子に、さらに中性子がくっついてヘリウム原子核となるプロセスも起こっていたと考えられる。さらなる宇宙の膨張にともなって、ようやく、水素原子核やヘリウム原子核が電子を細くして水素原子やヘリウム原子が世の中に出現した。そして、この時代に存在していたのは、殆どこれらの原子のみであったと考えられる。

 では、私たちの体を構成する炭素や、人間の正確に欠かせない多くの元素はいつ出来たのかというと、それは、恒星の中であったと思われている。恒星のエネルギー源は軽元素の融合(核融合)である。星の中では水素同士の結合によりヘリウムが出来る。その後、ヘリウムは星の中心で圧縮され、1億度以上になるとヘリウムの核融合が始まりベリリウム、炭素、酸素になる。さらに温度が上がって炭素や酸素の核融合が始まるとナトリウム、マグネシウム、ケイ素などができる。そして次の段階ではケイ素が燃焼して硫黄やアルゴンなどに変わる。

 ただし、核融合がどんどん進んで、次から次へと思い元素ができる訳ではない。実は原子核は鉄あたりが一番安定で、それより思い核を2つ併せて、とても重たい原子を一挙に作るわけにはいかない。その代わりに核融合時に出た中性子などを鉄などの原子核が補足して、だんだんと重たい原子が出来ていく。

 星が、寿命の最後に超新星爆発を起こすと、これらの重元素は宇宙空間に放出される。それは、新たな恒星の核となることもあれば、あるいは惑星を形成することもある。

 私たちは地球の上に住んでいる。私たちの地球や私たちを構成している原子は、宇宙の始まりから地球上にあるような気がするかもしれないけれど、決してそんなことはなく、私たちや私たちの回りのものは(水素をのぞいては)どこかの星の中で燃え上がって作り出されたものなのである。

 

分子結合へ

 授業の最後に、次のステップへの道を少しだけお話しすることにしよう。分子結合の話である。

話を、すごく簡単にするために1次元の水素原子を考えよう。実は1次元の水素原子では(話したかもしれないけれど)、1sに相当する状態はの大きさは0で結合エネルギーはマイナス無限大になってしまうのだけれど、ここでは、ポテンシャルが純粋なクーロンではなく、結合エネルギーがマイナス無限大にならない状況を考えよう。

この時の1sの軌道は(頭はなめらかになるべき)

 

そして、次にエネルギーの低い軌道は

 

で2p的なものである。でも、調和振動子や井戸型ポテンシャルを思い起こせば、これは最低次の節のない波動関数と、その上の節のある波動関数になっていることが分かる。すると、その上の波動関数の形は

 

であると想像がつくけれども、実際その通りである。

 

では2つの1次元水素原子が、並んだ状態を考えることにしよう。この時の波動関数は電子が2つの水素原子の間を自由に行き来できるとすると、最低次は

 

こんな形になりそうである。実際には、それぞれの水素原子のポテンシャルがあるので、こんなになだらかな関数ではなく

 

な形状になるのだけれど、この波動関数を原子の波動関数と比べてみると、幅が拡がっていることは明白である。幅が拡がると何が起こるかといえば、井戸型ポテンシャルの類推からすれば、電子系の最低エネルギーが低くなるはずである。

実際の水素は電荷があるために、こうした広がりによる安定化の機構の外に、クーロンエネルギーの問題が絡んで来るのだけれど(それ故に、水素分子の安定化機構のきっちりした議論は必ずしも単純ではない)、これで、少なくとも水素分子が出来そうな理由は納得できると思う。

ではヘリウム分子ができないのは何故だろう。

2つのヘリウム原子を考える。先ほどと同じように、最低次の軌道、そして、高次の軌道がある。ヘリウム原子には2個の電子があるので、全部で4個の電子がある。最低次の軌道にはパウリの排他律より2個の電子が入る。しかし、残りに2個はもはや最低次には入れないので、上の軌道に入らなければならない。計算してみると、上に軌道のエネルギーは高く、トータルとしてヘリウム原子でいるのに比べてエネルギーの損失が起こる。これが、ヘリウム分子が出来ない大雑把な理由である。水素の場合は、先ほどは述べなかったが、原子あたりに電子が1個しかないので、分子を構成する2個の電子は最低次のエネルギー軌道にスピンを逆にして2つとも収まることができるのである。

この話の詳細は来期の授業で行われることになる。