顕微鏡小史
 法政大学出版局から出ている「シングルレンズ」という本に、この小史の多くの部分は負っている。今から300年以上昔のオランダのマニアックな商人の話は、サイエンスは好奇心の結果であることを改めて思いおこさせてくれる。また、技術の発達が社会とどのように影響しあったかなども顕微鏡という小さな道具の歴史を通して感じられる。おすすめの一冊である。
17世紀初頭
 この時代には望遠鏡も発明されている。望遠鏡は、かならず対物レンズと凸または凹レンズの接眼レンズから構成されているわけで、腹式顕微鏡も、望遠鏡の素直な延長として発明されたのかもしれない(当時は、望遠鏡は重要な軍事技術であり、研究開発に対するモチベーションはある。それに対して顕微鏡は趣味の道具でしかない。)。そうだとすると、顕微鏡の発明と称されるものは、複式顕微鏡の発明を意味しており、それよりも性能の高い単式顕微鏡は、それ以前から存在していたのかもしれない(ルーペからの、ある意味では連続的な進歩の延長に単式顕微鏡が存在しているので発明品と見なされなかった可能性がある)。
光学性能が優れた単式顕微鏡
レーウェンフックの観察対象が、あまりにも小さいものにまで及んでいるので、彼は秘密の複式顕微鏡を持っていたのではないかと考える研究者もいたようである。現存する彼が作った単式顕微鏡を用いたテストでは、本文で記したように1.4μmの分解能が確認されている。
ちなみに、彼は物体のサイズを髪の毛と比較して記しているが、その大きさが系統的に狂っており、それも彼の観察に疑念を抱かせる原因であった。この問題は、当時の人間がヒツジの毛のかつらを常用しており、かれも人の毛ではなくかつらの毛を用いていたという指摘で解消した。
レーウェンフックの単レンズは非球面である。どのように非球面レンズを作ったかは謎とされている。最近、NHK趣味講座の大人の科学の中で米村傳次郎氏が紹介している薄く膨らましたガラスを活用してレンズを作る方法では自然と非球面ができるような印象がある。 この顕微鏡は米村氏のHP(http://www.denjiro.co.jp/) で販売されているようである。
本格的に色消しレンズ
色消しレンズ自体は1729年に英国のC.M.Hallにより考案され、1733年に試作品が完成している。商業的に販売されるようになったのは1760年ごろからで、当初は望遠鏡に用いられていた。色消しレンズには分散の異なる光学ガラスが必要である。このため18世紀後半には良質な光学ガラスへの需要が高まっていた。そして18世紀の後半にから19世紀にかけてスイスのP.L.Guinandにより、良質なクラウン・フリントガラスを作製する技術が開発された。(吉田正太郎「望遠鏡発達史(上)」誠文堂新光社による)
職工長が経験に基づいて調整して製品
当時の光学製品は経験を積んだ親方(マイスター)の熟練作業のたまものだった。ツァイスの工場が熟練作業を必要としないよな近代的製造法を取り入れたときに、他の工場はツァイスとは製造工程が異なり親方が手作りをしていることを宣伝材料にしたらしい。しかし、ツァイスの製品の方が性能的に優れており、そのことが顧客にも浸透するにつれてツァイスと同じ工程というのが宣伝文句になっていった。
油浸レンズ
対物レンズ前面とカバーガラスの間にカバーガラスと同じ屈折率の液体を流し込んで使うレンズ。こうすると、NA値が屈折率の分だけ大きくなるので分解能が向上する。油浸レンズを用いる時には照明側もコンデンサレンズとスライドグラスの間を油浸する。コンデンサレンズで1以上のNA値が記してあるものは油浸(もしくは水浸)使用を想定したものである。
油浸レンズ実際にはアッベにより顕微鏡分解能の理論が完成する以前にイタリアのアミチによって考案されている。アミチまた、高倍率の対物レンズの前端に半球状の単レンズを入れると解像力がよくなることも見出している。現代の高倍率対物レンズも断面図を見ると対物レンズの先端のレンズは平面もしくは凹面で、反対側は強い凸面となっているアミチの工夫の延長上にあるものが多い。
天然の蛍石
螢石は可視領域で低屈折低分散で通常の光学ガラスとは特性が大きく異なるために、光学ガラスに螢石を組合わせると色収差を効果的に補正できる。当時は螢石は天然のものしかなかったために、望遠鏡などの大型のレンズには使用できなかった。1970年頃からは人工の螢石単結晶が工業的に生産されるようになり望遠鏡やカメラの望遠レンズにも螢石が使用できるようになった。ただし、螢石は結晶であるために熱ショックに弱いなどの問題があり、螢石に光学特性が類似した光学ガラスが開発されるとともに螢石から新しい光学ガラスへの移行が起こった。
顕微鏡・光学機器メーカーとして世界的な地位
この地位は決して特許によって他社との技術差を確保することによって築かれたものではないことは特筆に値する。アッベは可視領域3波長に対して色消しを行ったアポクロマートレンズを開発したが、これに関しては特許を(あえて)取得していない。コマ収差の補正計算に必要なアッベの正弦条件についても公開されていた。
可視領域に吸収をもたない
金属錯体液晶などは金属イオンによる吸収をもっていて色付いたりする。電荷移動錯体液晶も錯体を形成すれば、それなりの色になると思う。それ以外にフタロシアニンディスコティック液晶も色付いている。液晶状態の電荷移動などは、生体系とも関連して面白い研究分野だと思う。もうちょっと合成技術をもっていたらと思うことがある…。
干渉顕微鏡
昨年(1999)になって学生さんが某所より微分干渉セットを借りてきた。それを使ってフリースタンディングフィルムを観察すると結構面白い。しばらく前に、どさくさに紛れて買い込んだ落射照明ユニットは、利用者がいないまま朽ち果てるかと危惧していたらフリースタンディングフィルムの観察で活用されるようになり安心した。こちらも、透過とはずいぶんと違った画像が得られるので有用な観測手段であることが確認できた。
位相差顕微鏡
位相差ユニットは手持ちがなく、未だ、液晶観察に有益かの実感はない。誰か、貸してくれないかなぁ。
ニコルプリズム
ニコルプリズムはプリズムを回転した時に光線の位置が変わるので、レーザー光線との組合わせなどでは使いにくい。このため偏光プリズムとしては現在はグラントムソンとかグランテイラーなどの、その後に開発されたプリズムが用いられている。ニコルプリズムの特徴はプリズムの角度が方解石の壁界面の角度に近く工作が容易で、材料のロスも少ないことがある。このあたりは最初に開発された理由であるらしい。
ポラロイドフィルムが発明される以前の偏光顕微鏡は当然偏光プリズムを用いている。戦前のと思われる独ライツ社の偏光顕微鏡を見ると、照明系の偏光子にはニコルプリズムを用いているが、対物レンズと接眼レンズの間の偏光子(検光子)にはグラントムソン(だと思う)を用いている。これは、ニコルプリズムでは光軸が平行にずれるために、検光子にニコルプリズムを用いると対物と接眼レンズの光軸が異なるという面倒な状況が発生するためではないかと思う。一方、照明系でニコルプリズムを用いていることは、ニコルプリズムの方が割安であったことを示唆しているように感じられる。
顕微鏡に用いられているプリズムの口径はかなり小さい。これは大きなプリズムが高価なためであろうが、顕微鏡の設計という点からは大きな制限になっている。偏光プリズムが偏光フィルムへ代わった大きな理由はコスト的なものであると思うが、口径制限も多少は影響を与えているのかもしれない。
偏光フィルム
始祖はポラロイド。ポラロイドというとインスタント写真でお馴染みである。実にインスタント写真も偏光フィルムもランド博士の発明品である。国産でもダイクロームとか幾つかの品が出ている。基本的にはポリビニルアルコールに沃素を吸着させて延伸したフィルム。性能がよくなくてよいなら自作することもできる(「鉱物の顕微鏡観察」(地人書館)には作り方が書いてある。)。偏光フィルムは可視領域以外では偏光特性が急激に悪くなるので400nm〜700nm以外の波長領域で用いる場合には注意する必要がある。
性能の差はない
厳密にいうと、双眼にするためのプリズムなどの余計な光学素子がない分だけ単眼のコンパクトなものの方が光学的性能はよくなりうる。最新の倒立型顕微鏡のカタログには、最高の光学性能を発揮するために、対物レンズからの光をプリズムやミラーを通さないで直接取り出すポートがオプションで設定できるようになっているのだが、単眼の顕微鏡は、まさにその状態にある。
さらに、ニコンの単眼偏光顕微鏡はコノスコープ用のベルトランレンズが上下に動かせピント調節が可能となっている。この点も双眼偏光顕微鏡より優れた点である。
現在、ニコンでは単眼の偏光顕微鏡の製造をやめてしまっているが、このように優れた点も多く、顕微鏡の原理もよく分かるシステムなので、しばらく前に坪井博士(岩波:偏光顕微鏡の著者)を筆頭に、かなりの数の学者の署名つきの復活の嘆願書が送られたそうだ。コスト計算の結果、嘆願はかなわなかったようだ…。(ニコンは、2000年にS3というかつての距離計連動カメラの特別復刻を決めた。はっきり言って、今日的観点からはS3の復刻版を出すことにコレクターを煽る以外の意味はない。それよりは、単眼の偏光顕微鏡や折り畳み式屋外用顕微鏡の復刻の方が、文化的にもはるかに価値のある行為であろう。)
安直に使用できる
個人的には、適当なライトと軽くて持ち運びの容易な単眼の顕微鏡の方が安直に使える気がするのだが、人によっては反射鏡の位置合わせや適当なライトを探すのがめんどくさいらしい。学生さんがめんどくさがって単眼の顕微鏡を使わないので個人的には幸せではある。
高級なことをやっているという気持
こういう場合にやっていることの内容は器材の価格に反比例していることが多い…。
接眼レンズの同焦位置に
この部分は、光学筒長の定義と共に2003年1月まで間違った記述をしていた(^_^;)。接眼レンズの取り付け面のところが対物レンズによる結像位置であると、なぜか誤解をしていてそのように記していたのだけれども、結像位置は通常は取り付け面より10mmほど鏡筒内に設定されている。従って、「顕微鏡の接眼レンズをはずして、そこにトレーシングペーパーなどを貼ると対物レンズによる実像が映し出される。」ということはない。(場合によれば、そこそこピントがあるように見えるかも知れないけれど)。この間違いに気がつかなかったのは、多くの接眼レンズでは対物レンズの結像面が接眼レンズの中に来るために、正確な位置を測定することが出来なかったためである。が、手元にある15倍の接眼レンズを念のために見てみたら、視野マスクが接眼のレンズ群の外にある設計で、明らかに、取り付け面より10mm程度(目測)下にくるようになっていた(^_^;)。深く反省している。
一定なので
かつては、ある程度の範囲で鏡筒長を変えられる顕微鏡もあった。これは、異なったシステムの対物レンズを組合わせるときや、カバーガラスの厚みの微小な差を補正するのに有効であったらしい。対物レンズの設計が厳密になるとともに、鏡筒長は自由度を失い、有限光学系でも鏡筒長は変えられなくなった。
M≒L/f
実際には、対物レンズの像側焦点位置は対物レンズ取付け面位置にはないので、像側焦点面から接眼レンズ取付け面までの距離は鏡筒長から少しばかり異なっている。それ故に、ここで示した関係は厳密なものではない。
NAが大きいほど対物レンズの分解能は高く
ただし、ちゃんと収差のない対物レンズを正しく使っていることが前提である。特にNAの大きな高い分解能のレンズほど使い方が悪いと性能が発揮でいない。例えば、乾燥系でNAが0.9程度の100倍の対物レンズでも指定された厚さ以外のカバーガラスと組合わせるとNAが0.65程度の40倍レンズ程度の性能になるという。
NAと分解能の関係を理解するために
以下の説明は、かなり特殊な条件下で、しかも簡略化したものであるので、これで総てとは思わないでほしい。
なお、このような考え方以外にも光を波動とした時の回折を計算して分解能を求める手法も、望遠鏡やカメラレンズの分解能の議論では行われている。レンズの分解能は基本的に回折により生じているので、これらの計算結果は(分解能の定義により多少のファクターは変わるにしても)同程度の理論的分解能を与える。ちなみに写真レンズの理論分解能(最小解像可能距離)はd線に対して
F値 対応するNA値 理論分解能(μm)
0.5 0.358
1.0   0.717
2.0   1.43
8.0   5.73
32   22.9
となっている。顕微鏡の分解能の値と大体同じ程度である。
コヒーレント
coherent(英):「可干渉性の」。例えば2重スリットによる干渉実験を考えよう。光源としてレーザー光を用いて2重スリットにあてれば、2重スリットによる干渉パターンが観察される。ところが光源として白熱電球を用いると、そのままでは干渉パターンは観察されない。これは、白熱電球のフィラメント上の別々の場所から出てくる光子の位相がランダムであるために、スリットを通過後に位相の異なる光が混ざり会って全体として干渉効果が見られないためである。それに対してレーザー光は発振のメカニズムよりある程度のコヒーレント性を持っている。通常の光でも工夫をすれば干渉性となる。例えば白熱電球からの光をピンホールを通してから2重スリットの実験に用いれば2重スリットの干渉パターンは観察される。
コヒーレントの程度をあらわすのにコヒーレント長さがある。これは、単純にはマイケルソンの干渉系で、2つのアームの長さをどれだけ変えたら干渉が観察できなくなるかで示される。例えば白熱電球の光は2つのアームの長さが正確に等しい時には干渉が起こるが、わずかにでもことなれば干渉は生じなくなる。それに対してレーザーではものによって数十センチから数メートル違えても干渉する。
 
インコヒーレント
「干渉性のない」という意味。白熱電球や蛍光燈などの普通の電球は員コヒーレント光源である。顕微鏡も開口絞りを開いた状態ではインコヒーレント照明であるが、絞っていくと空間的に限られた領域からの光束になっていき、コヒーレント性が出てくる(部分コヒーレント光源)。このあたりの議論はややこしいので略。
 
視力1
視力1は1分(1/60度)の識別できる能力。1分は5m離れて1.5mmとなる。視力検査の視力1の円環は隙間が1.5mmとなっている。視力=1/識別出来る角度(分単位)で定義されるので、視力0.1の場合は、円環の隙間は1.5cmとなる。明視の距離で識別できる間隔は視力1で0.075ミリ(75ミクロン)となる。四捨五入して丸めれば0.1mmとなる。
 

 

1点で収束しなくなる
顕微鏡だけでなく、カメラのレンズなどでもレンズ全面と被写体との間の屈折率が設計値と異なれば画像が劣化するはずである。ただし、写真レンズの場合には物体側の見込み角は小さいので、球面収差が問題になることは少なく、画角に依存する収差の方が問題になるようである。実際、水陸両用カメラのニコノスでは準広角と望遠レンズは水陸共用で、広角レンズのみ水中専用になっている。水中専用レンズを陸上で用いると周辺部の像が悪くなる(多分、コマ収差がすごく出ると思う。はずである(もっていないので試していないが。)
液晶観察用対物レンズ
ニコンとオリンパスからそれぞれ販売されている。本文に記したように、原理的には普通の対物レンズよりはいいはずである。ところで、私の周りの液晶研究者でこの手のレンズを積極的に使っている人には会ったことがない。もっとも、大学人は貧乏なので存在を認識していても手が届かない場合も多いにあり得ると思う。正直なところ手持ちの対物レンズでそこそこ像が見えているのに、あえて高いお金を出してスペシャルな対物レンズを購入すべきかは難しい問題である。いったい、誰からの要請で、この種のレンズが開発されてしまったのだろうか。どうも液晶をやっている人から「1mm程度のガラスを通して試料を見る」といわれてメーカーサイドで、それなら原理的に補正が必要だとばかりに作ってしまった気がしないでもない。
 本当に使いこなして、必要性を認識されている人がいらっしゃったら状況をお教えいただけると幸いである。
落射照明とのマッチング
落射照明では対物レンズと接眼レンズの間にハーフミラーのついた中間鏡筒を入れて、照明にも対物レンズを使って同軸の照明を行う(専用の対物レンズで暗視野照明を行う場合もある)。この時、レンズの設計が悪いと照明光の対物レンズで反射した成分が観察光に混ざりフレアーとなってしまう。そこで、金属顕微鏡の対物レンズは反射光が接眼レンズにいかないように考慮して設計してある。
一方、生物を観察する場合に落射照明による反射観察を普通は行わないので、反射光によるフレアーは設計時に考慮されていない。その分設計の自由度はますので設計は楽になっているはずである。
反射率が異なる
一番単純にはブリュースター角での入射を考えればP偏光では反射率0であるのに対し、S偏光は有限の反射率となるので、透過光のPとSの成分比が入射光と異なってしまうことが理解されると思う。
レンズに減反射コーティングがしてあると、斜入射時のS偏光の反射も少なくなるので、反射率の差による偏光の乱れは少なくなる。しかし、なくすことは原理的に不可能である。
偏光の乱れが大きく
一般に微細な物体を見ようとするほど高倍率の対物レンズを使うことになるので、偏光の乱れが問題になる。特に見たい物体の複屈折が小さい場合には偏光が乱れるとコントラストが低下して理想的な条件では識別可能なものが識別できなくなる。液晶が対象の場合には、通常のセルは複屈折が大きいので、コントラストの低下が問題になることはない。しかしフリースタンディングフィルムで膜厚が薄い場合には問題が生じる可能性がある。
レクティファイヤー
1/2波長板と度の強い凸レンズと凹レンズを組合わせてパワーを0にしたレンズ群からなる光学系で、対物レンズやコンデンサーで発生するのとは逆方向に反射による偏光の乱れを発生させてうち消すようにする。もともとは生物系の偏光顕微鏡観察のために発明された。一頃は日本光学から商品化されていたが現在はカタログ商品ではなくなっている。
長作動距離コンデンサレンズ
50倍程度の対物レンズの作動距離が10mmを遥かに越えるようになっているのに対して、設計がより容易なはずのコンデンサの作動距離が10mm程度に止まっているのは不思議な話である。液晶を観察する立場からは作動距離が15〜20mm程度でNAが0.4程度のコンデンサがあれば幸せなのだが、不幸にしてニコンにもオリンパスにも通常の顕微鏡に対応した、このような商品は見あたらない気がする。
オーク製作所の顕微分光装置では10倍の長作動距離の対物レンズをコンデンサとして用いている。対物レンズをコンデンサに用いることは、収差補正の点では過剰スペックではあるが、分光のように厳しい用途には必用なことなのかもしれない。それを見て、まねをすることを考えたのだけれど、ホルダーやら照明効率(普通の顕微鏡のコンデンサ位置での照明光源象は結構大きく、対物レンズを用いるとほとんどの光をロスしてしまう)や照明の見込み角(コントラストの関係から対物よりNAを下げることが望ましいが絞りのない対物レンズではそれは困難である)などの問題があり実行していない。また、作動距離10mmのコンデンサに凹レンズを組み合わせて作動距離を伸ばすことも考えているが、これも実行していない。
なお、倒立顕微鏡用には適当なNAで作動距離が長いコンデンサが用意されている。倒立顕微鏡の偏光システムがどの程度しっかりしているかは分からないが、操作性を含めて液晶研究用に活用されてよい。
ベルトラントレンズ
それが、何であるかはおいておいて(コノスコープ観察のところで説明します)、実は最近はこれがついていない偏光顕微鏡もあるそうである。それも、国産のかなり高価な商品である。確かに生物学用途などでは使うことはないけれども釈然としないものがある。また、目視ではベルトランレンズが入るが、写真撮影側の鏡筒には入っていなかったのはもう一つの国産某社の製品である。目視で観察して、写真撮影をしようとして呆然としてしまった。なんていうのかなぁ、製品がかっこよくなるのは別に悪くはないけれど、その一方で基本的な機能が欠落していくのは許し難いことだ。
長作動距離のもの
ちなみにニコンの長作動距離コンデンサは1998年初頭で在庫商品になっていた。5万程度という必ずしも安くはない商品(私らにとって)なので、とりあえず1個注文しようと思っていたのだけれぞ、在庫商品と聞いた瞬間に、3個発注してしまった。ニコンの顕微鏡を持っているなら早めに確保した方がよい。通常のハネノケコンデンサをはねのけ状態で使うのに比べてメトラーのホットステージとの組合せで倍近く明るさが稼げる(倍程度にしかならないのは、作動距離がメトラーのホットステージの厚さに負けていて、ベストの状態で使用できないためである。)。
この長作動距離コンデンサが、そもそも顕微鏡のことを調べようと考えるきっかけになった品である。修士の学生さんに付き合って液晶のスイッチング過程のストロボ写真を撮影しようとしたのだけれど、どうしても明るさが足りなかった。昔は撮影出来ていたので、バルブが劣化したのかとか、いろいろ理由を考えたのだけれども結局分からず、顕微鏡の本を眺めて考えているうちに行き着いたのがコンデンサであった。ちなみに研究室にはニコンの双眼顕微鏡が3台あるが、そのうちの1台(最初に入手したもの、これは、ユニオンの対物レンズが装着できる様に支柱が延長してあるもので、当時研究生で来ていた松下の方の御好意によるものであると思う(その頃は学生なので詳しいいきさつは知らない))には、ちゃんと長作動距離コンデンサがついていた。そして、それが当時、ストロボ撮影を行っていた顕微鏡である。でも、長作動距離コンデンサの事は研究室内で誰も認識していなかったのだから、いい加減なもんである…。
ついでに書くと、大学院博士の頃に、チッソレーザー励起の色素レーザーで液晶の反転の様子を撮影しようとしていて、光量不足で果たせなかった。今考えれば、やはりコンデンサを含めた照明光学系に問題があった。今なら、当時と同じレーザーを用いて写真撮影ができると思う(あるいは、できるかできないかの決着をきちんとすることができる)。