2011年末の顕微鏡用デジタルカメラ選び

2009年の顕微鏡デジタルカメラ選びの記事をアップしてから、はや2年以上の歳月が流れた。研究室では、D400と40Dに60Dが加わってデジタル一眼レフは3台で運用している。今回は、なんで3台目が60Dになったのかも含めて、2011年12月時点での顕微鏡用デジタルカメラ選びについてまとめてみた。ただし、最初にお断りしておくが、これは、あくまでも、比較的低倍率の液晶観察が中心の用途での、しかも個人的な印象で、一般性は保証されていないことである。また、記事の中には誤認もあるだろうと思うので、これを信じてカメラを買ったけれど、うまく行かないと言われても、責任はとれないのでその点を了承の上、お読み頂きたい。

2009年の顕微鏡カメラ選びでも記したけれど、D300と40Dを比較すると、ライブビューからの撮影時にD300は一旦ミラーが下がってから通常のシャッター動作になるのに対して、40Dはミラーがあがったままでシャッターが切れる。

40Dの方がミラーショックがないために、撮影時のぶれが少ないと予想される。実際に、実際に両機種で撮影画像を比較してみると40Dの方がぶれが少ないことが確認できる。その後、長らく40Dがぶれが少ないのはミラーショックがないせいだと信じていたのだけれど、ある日、低速シャッターでの撮影時に、レリーズ直後に機械音がしていないのに気がついた。どうやら、撮像素子を電気的にリフレッシュしてシャッターに代えているようなのである。

その後、キヤノン社の廉価版一眼デジタルカメラでは、シャッターの機械的先幕がなく、電子的にシャッター動作を行っているものの存在を知り、また、上級の7Dクラスでは、ライブビューからの静音モードでは、電子シャッターで露出が始まるという記事を見つけ、40Dが少なくとも低速では先幕電子シャッターであることには確信がもてた。

では、高速シャッターの場合にはどうなのだろう。これについては、シャッター音から判断することは困難なのだけれど、どうやら、電子シャッターでは、高速シャッターで露出ムラが生じることがあるらしい。そこで、ライブビューからと、ライブビューではない状態からの撮影結果を比較することにした。

ライブビューからの撮影

ライブビューからの撮影

ミラーが降りた状態から撮影

ミラーが下がった状態からの撮影

これは40Dの最高速度1/8000の画像である。とりあえず、試料は何も入れず、ピント合わせもしていない。画像を見れば一目瞭然。ライブビューでの撮影では一端がかなりの露出過度、もう一端が露出不足になっている。ミラーが降りた状態からの撮影は、露出ムラが出ているけれども、それでも遙かに均一になっている。ということは、40Dではライブビュー時にはシャッター速度によらず、電子シャッターで露出が始まっているようだ。

顕微鏡用のデジタルカメラとしては、露出時に機械動作がないことが望ましい。数年前からグローバルシャッター(全画素を同時に電子的にシャッター動作させるもの)を搭載した次世代カメラの出現が囁かれていて、その出現を待っているのだけれど、2011年12月現在では、そのアナウンスはまだなされていない。その一方で、先幕電子シャッターは密かに実用化されていたわけである。

キヤノン以外に先幕電子シャッターを搭載したカメラがないかと調べたところ、確認した範囲で、SonyのNEXも先幕電子シャッターであった。それ以外に、ペンタックスやニコンの新型カメラも可能性はあるのだけれど、撮像素子の大きさが小さく、現状では顕微鏡カメラとして撮影範囲が狭くなりすぎるので、チェックはしていない。せめて4/3程度の素子サイズはほしいのである。

ところでSonyのNEXであるが、フランジバックも短く、ニコンFマウントにもオリンパスOMマウントにもアダプターを介して装着可能であるので、旧型の顕微鏡を持っている人にとっては、顕微鏡カメラの候補になり得る品である。ただし、店頭で確認した限りでは、コンピュータに接続した状態でコンピュータ画面上でライブビュー画面を見ながらシャッターを切るようなソフトは用意されていない。この点で、現状ではキヤノンのシステムに軍配が上がる。

というわけで、現時点で顕微鏡に取り付けるデジタルカメラの選択は次のような感じかなと思っている。

ニコンの有限系システムの場合は、とにかくFマウントへの変換アダプタを取り付ける。鏡基が白色のシステムなら専用の35mmカメラが取り付けられる写真撮影装置を入手する。ただし、フィルムカメラが取り外せるものでないと行けない。あまりに新しい物は、この点でだめかもしれない。なお、撮影用のコントローラは必要ない。そして、撮影装置の中にあるシャッターやら、照準鏡筒へ光を分配するプリズム等を光路から外す。もちろん、そのためには装置を分解する必要がある。そしてまた、たぶん、非可逆的な作業になるのではないかと思う。その後はニコン‐EOSアダプタをかませてEOSボディーを取り付ける。写真撮影用のトランスファーレンズはなるべく低倍率の物を用いた方がよい。上で紹介したEOSはAPS-Cサイズの撮像素子なので、従来のフィルムに比較して、ただでさえ撮影範囲が狭くなるのである。もちろん、何らかの事情で部分だけ撮影したい場合には、高倍率のトランスファーを使うことはかまわない。

オリンパスのBH-2クラスの機種の場合は、OM用の接続アダプターを見つけ出すのが近道である。残念ながら、それほど頻繁にはネット-オークションには出てこないが、じっと待っていれば、いつかは出て来ると思う。あとはOM-EOSアダプタを使ってEOSボディーにつなぐ。こちらも、トランスファーレンズは倍率が低い方がよい。

オリンパスの現在の無限遠補正系の場合は、2009年のものに記した組み合わせでニコンFマウントまで持って行く。その先に何をつけるかは、現時点では少しばかり悩ましいところもある。オリンパスの現行の対物レンズには視野数が22のものと26.5の物がある。μフォーサーズならどちらでも問題なく使えるが、APS-Cだと22のものは周辺画質が低下するだろうと思う。顕微鏡撮影用には、どちらかというと正方形に近いフォーマットのカメラの方が都合がよい。同じ対角線長に対して、より多くの面積が撮影されるからである。

このことが、2009年時点でμフォーサーズを一押しにした理由で、その点は現在も替わっていないのだけれど、カメラとPCの接続の使いやすさを考えると、現状ではEOSの方がよいかなぁという気分だ。

なお、PCと接続するつもりがなく、カメラ単体で使うのなら、バリアングルモニターとACアダプターがついている機種なら、どれでもそれほど悪くはないだろうと思う。ただし、現在のμフォーサーズ機種については、機械シャッターで露出制御をするようなので、それによるブレは生じるかもしれない。この点は、自分ではきちんと確認していない。(学生実験レベルでは問題は生じていないけれども、あまり高倍率の撮影はしていないし、シビアなチェックも行っていないので、ぶれないことを保証できない。)

ニコンの現行の機種に関しては、純正の部品でレンズ交換式デジタルカメラに接続するアダプターは用意されていないように思う。私の知る限りでは、テクノシナジーさんがμフォーサーズ用のアダプターを作っている。これを使えば、ニコンの顕微鏡にμフォーサーズを直づけできる。EOSに関しては、個人的に知っている限りでは取り付けられるアダプターを供給しているところはない。

最後にEOSのボディーとして何を使うかであるが、調べた範囲で一番安価なEOS Kiss X50 でも標準でPCと接続するソフトがついてくる。ライブビューからの撮影も十分に実用的である。ただし、動画のフォーマットや、マルチアスペクト比の機能などを考えると、一つ上のX5の方が、柔軟性のある運用ができると思う。何しろ、X5には機械先幕もあるので、露出ムラなく高速シャッターを切ることも可能だ。研究室で60Dにしたのは、シャッターの耐久性などがX5よりは上なので、長期的には割安になることを考えてである。X5の耐久性は非公開だがWeb上では3~5万回程度ではないかとの記事が多い。これに対して60Dは10万回、7Dは15万回とされている。後は、デジタルカメラの進歩を考えて、その機種を使う間にどの程度の回数を撮影するかだ。研究室で業務用に使う場合などは、年間で数万回になっても驚かないので、それを考えると、X5クラスでは少し足りない気がする。

 

TOP私家版実験講座 - 2011年末の顕微鏡用デジタルカメラ選び