2次元異常干渉色図表

これまで、実際の液晶の複屈折分散を入れた異常干渉色図表や縦軸に厚さ、横軸に複屈折をとった2次元干渉色図表などを作ってきた。そんなことをやっているうちに思いついたのが、縦軸にリタデーション、横軸に複屈折の分散をとった2次元異常干渉色図表である。

横軸の屈折率分散については坪井誠太郎の「偏光顕微鏡」(岩波書店)によれば、複屈折の分散を表すN数がEhringhausにより定義されているという。それによると

N=(n2-n1)D/((n2-n1)F-(n2-n1)C)=RD/(RF-RC)

と定義されるNの値が30より小さくなると、いわゆる異常干渉色が目立つようになるという。このNの定義は、まさに、アッベ数の定義を、屈折率から屈折率差に置き換えたもので、いわば、分散のアッベ数に相当するものとい言えるだろう。定義より、分散がまったくない場合にはNは無限大になる。そして、Nが小さくなるほど、分散が大きくなる。典型的な物質では水晶でN値は30以上、方解石で20程度、そして、液晶では5CBで10以下、MBBAでは5以下となっている。

2次元異常干渉色図表の横軸にNをそのままとろうとすると、無限大が出てきて具合がよろしくない。それに、Nが小さいほど分散が大きいというのも直感的には扱いにくいので、1/Nを横軸に取ることにする。実は、アッベ数の場合には、色消しレンズの設計時に便利であるという理由があり、現在の形態となっているのだが、N数については、そのような必然は存在しておらず、単にアッベ数の定義をそのまま拡張しただけという印象がないわけでもない。

さて、2次元異常干渉色図表を作製する時の最大の問題は、ある分散曲線があれば、Nの値を一意に定められるけれども、逆は真ではないということである。N数が定まったところで、それを満足するような分散の組合せは無限に存在し、そして、それぞれに干渉色の異常の度合いが異なっているはずである。つまり、一般的な2次元異常干渉色図表を作り出すことは不可能で、何らかの仮定により定めた数式に従って、N値から決定した分散を用いて計算した2次元干渉色図表を作ることしか出来ないのである。あとは、いかに、現実の系に近い分散を与える式を簡単に定められるかである。

可視領域の分散の近似にはコーシーの分散式

n=a/(ramda)4+b/(ramda)2+c

がよく用いられる。そこで、この式を適用することを考えたのだけれども、N値を定めるのには1つの波長と、その波長での複屈折値と2つの波長とその波長での複屈折値の差しか用いておらず、コーシーの分散式の係数を一意的に定めることは出来ない。少しばかり困ったのだけれども、実際の液晶の分散を波長の4乗分の1に対してプロットすると、そこそこ直線にのっている。ということは、二乗の項は無視しても、それほど悪くないことを意味している。そこで、波長の4乗分の1と定数項のみでフィットして分散を定めることとした。2乗の項を無視した結果として、短波長側で実際の分散よりも複屈折が大きくなり、長波長側でも大きくなる傾向がある。N値を5CB(山口らのコーシーの分散式の係数をもとに計算した値)と合わせて計算すると、380nmでの複屈折の相対値(基準となるD線に対する値)が、1.4410のところが1.445、780nmで、0.929となるべきところが、0.935となる。莫大にずれているわけではないので、良しとすることにした。

プログラム(prg7.exe)の仕様は、毎度の作りで、波長毎のxyz係数ファイル(cie.csv)と光源ファイル(lc.csv)がないと動作しない。また、画面に書き出すだけなので、あとはキャプチャーして手を加える必要がある。手を加えると、例えば

などという図を作り出すことができる。この図は縦軸にD線での複屈折を基準にしたリタデーション、横軸にN値(もしくは1/N値)を取った物である。眺めると、分散が大きくなると鋭敏色の紫の幅が拡がり(鋭敏ではなくなるわけだ)、2次の緑が鮮やかになるといった傾向が見て取れる。逆に、実際のサンプルの干渉色の変化をみれば、分散の大きさが想像できたりするかなぁとおもうのであった。

ついでに、普通の偏光色図表も掲載しておく。なにしろ、自分のPCのどこにあるのかすぐに分からなくなるので、Webに上げておけば探す手間が省けるのである。

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