コンペンセータの補償限界

ベレック型コンペンセータは、複屈折物体のリタデーションを手軽に測定するのに便利な道具である。偏光顕微鏡の位相差板の替わりに差し込んで用いるものである。

ベレック型コンペンセータ。日本地科学社から販売されている。

ところが、ベレック型コンペンセータで少し厚めの液晶セルのリタデーション測定をしようとすると、消光状態が得られずに測定ができないという問題がある。これは、基本的にベレック型コンペンセータの複屈折物体(無機物)に対して測定対象の液晶の複屈折の分散が大きいために、リタデーションが大きくなると全波長領域での補償が効かなくなるためである。それなら、測定波長領域を狭くすればよいはずだと、顕微鏡に附属している緑のフィルターを入れると、複屈折の値が妙に小さくなってしまう。何が起こっていて、どこまでなら、まっとうな測定ができるのかを見積もるべく、コンペンセータの補償シミュレーションを行った。

プログラム名はprg2.exeである。プログラムの動作にはCIEのXYZの数値表(xyz.csv)、光源ファイル(ls.csv)の他、コンペンセータの素材の複屈折データ(dnc.csv)、フィルターをつかう場合はそのファイルが必要である。コンペンセータの材質ものの本によると方解石とっている。(少し前まで水晶かなぁと思っていた。何しろ、固くて加工性がよいから。でも、考えてみれば水晶には旋光性があるので、不適かもしれない)方解石の複屈折データを用意した。フィルターファイルの参考として、ニコン偏光顕微鏡に附属していた緑フィルターの透過スペクトルのファイルを用意した。

複屈折のデータファイルを読み込まないと先には進めない。フィルターファイルは読み込まなくても問題はない。読み込んだ後で、明るさの基準をフィルターを透過した光量を基準とする場合にはReCalc Yfactorを押す。後のパラメータは試料のリタデーション(590nmの複屈折を基準にした値)、コンペンセータの変動範囲、測定ポイント数である。計算結果はCIEのXYZ値としてファイルに書き出される。そのファイルをprg3.exeで読み込めば、色調の表示が行われる。prg3.exeについては異常干渉色を見て頂きたい。

さて、プログラムの動作を見るべく、水晶の複屈折データを用いてのシミュレーションを行った。水晶のリタデーションは1500nmとし、コンペンセータは0から3000nmの範囲で動かしている。(旋光性は考えていない)

ちょうど真中の1500nmで消光状態となり暗くなる。黒いところを挟んで左と右で少しは色調が異なるのは、水晶の複屈折分散と方解石の分散が多少は異なっているためである。この時の明るさの変化を図にすると

となり、確かに1500nmで暗くなっている。(これは、XYZのYを切り出してプロットすればよい。)

次ぎに、顕微鏡に附属の緑フィルターをかけた場合を見てみよう

位相差が補償された場合が一番暗くなるものの、他の場合もかなり暗い。とは言え、緑一色のため、明暗のみでのただしい消光状態の確認には注意が必要であろう。

続いて、K15で同じことを試してみる。K15の厚さはリタデーション1500nmで、コンペンセータは0~3000nmまで変化させている。

リタデーションは1500nmのはずだが、1500nmでは消光にならず、むしろ2000nmを越えたあたりの方が暗くなっている。

では、どこらへんまでなら、大丈夫かというと…… プログラムも掲載したことだし、後は興味のある人の作業にお任せする。

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