顕微鏡用カメラを修理する

 研究室ではNikonの顕微鏡を使っている。このため写真撮影装置も必然的にNikonブランドになる。写真撮影装置は焦準・シャッター・露出調整ユニットとその上に装着されるカメラから構成される。焦準部とカメラ部分の接続は不滅のNikonFマウントだ。だから、撮影の途中で異なる種類のフィルムを使いたい場合など、カメラからフィルムを取り出すことなく別のカメラと取り替えられる(もちろん複数のカメラを持っていればだが。)。もっとも、シャッターはないので、取り外したときにフィルムに光が到達しないように機械的な遮光板が取り付けられている。この遮光板はピンで焦準部と連動していて、カメラボディーを焦準部から外すと連動して閉じるようになっている。焦準部のメタルの連動ピンはNikonFマウントには存在しないものだが、Nikonの一眼レフを装着してもミラーがぶち当たらないように(少なくともFでは)取り付けてある。

 連動機構は私のように不注意な人間にとっては有り難いものなのだけれど、一つ重大な問題がある。取り付け操作を誤るとカメラ側のプラスチック製の連動ピンがいとも容易に折れてしまうのだ。連動ピンが折れると、カメラを焦準部に取り付けても遮光板が開かないの顕微鏡写真をいくら写しても、実際には何も写っていないことになる。Nikonの通常の一眼レフカメラと比べて顕微鏡用カメラのマウント位置の目印は小さい。またカメラ胴についている矢印は装着されたときに外す方向を示しているので、取り付け時には思わず逆方向に回転するというミスを誘うような作りにはなってはいるけれども、決して、そんなには折れるようなものではないはずである。ところが、研究室ではこれがよく折れる。それもここ1~2年のことである。カメラに注意書きを書いたり努力はしているのだけれども、一向に改善しない。半年の間に2本くらい平然と折れる。おれてしまったらしょうがないので修理に出すことになる。600円の部品代に1万円の管理費を取られるのだけれどもそれはルールだからしょうがない。部品さえ入手できれば自分で治せるのではないかという気もあったのだけれど、部品だけの注文は受けてくれないので諦めるしかなかった。

 カメラの連動ピンが折れていると、写真屋から戻ってきたフィルムが写っていないので故障に学生が気がつく。そうなると、何故か私の所にカメラが持ち込まれる。しょうがないので代理店の営業の人に電話してついでの時に取りに来て貰う。そして、修理が終わるとカメラがやってくる。それを開封してチェックして実験室に戻す。助教授の仕事のなかには、こんな用務員的なものも結構ある。それはさておき、ある日、戻ってきたカメラをあけてみたら修理ができていなかった。非常に単純な取り付けミスで、ピンが連動しない状態だったのだ。修理代が安いのなら、それほどは腹を立てなかったけれど1万円の管理費を取られているとなると話は別だ。カメラを再修理に戻すとともに、どのような理由で修理ミスを発見できずに戻ってくることになったのか、チェック体勢がどうなっているのかの回答を求めた。 

 個人的には書面で回答を頂ければ良いと思っていたのに、わざわざ説明に2名も来られたので恐縮してしまった数日後、また連動ピンが折れているのが発覚した。

 さすがに、修理に出すのははばかられた。いくら何でも間抜けすぎる。どう考えても異常な頻度で修理を頼んでいて、関係者がきた後にまた修理をだすなんて恥ずかしくてやってられない。どうしたものかと考えていたのだけれど、この際だからと、自分であけてしまうことにした。

修理プロセス

カバーの取り外し

修理をするからには、壊れた部品を取り出さなければならない。そのためには、まずネジを外してカメラを分解する必要がある。もちろん、不必要なところまで分解することはない。最初のステップは前面カバーの取り外しである。これは、本体側面のネジ合計4本と、もう二本、裏面のパトローネ(フィルム)を入れるところとフィルムを巻き上げる部分のかげにあるネジを外せばよい。これらのネジを外すと本体前面のプラスチックカバーは簡単にはずれる。

注意:写真ではネジ5本を乱雑においているが(本当は6本あるはず。巻き上げ側のネジが抜けていなくて本体に残っているようだ)、本来は、どこから外したネジかが分かるように表記して、きちんと小箱にいれて、どこのネジであるか分からなくならないように保存しないといけない。特に長さや太さの異なるネジがある場合には、整理しておかないと組み立てられなくなることがある。

遮光板ユニットの取り外し

続いて遮光板の取り付けてあるユニットを外す。間違えても、上の写真の正面に見えている金属のマウント部分を外す必要はないし、外すべきではない。金属のマウントが取り付けてあるブロックの4本のネジを外せば、本体からはずせるようになる。取り外しの時には、ケーブルを切断してしまわないように注意すること。また、ここまで外すと、本体への取り付けのロック部分の押しボタンがはずれるようになっているので、油断をすると押しボタンがはずれたりするので注意しておかなければならない。もっとも、はずれたらはめ直せば良い。

遮光板ユニットの分解

遮光板ユニットを取り外したら、裏返して裏側のネジをはずして遮光板ユニットを分解する。遮光板の部分がマウントのついているユニットからはずれる。遮光板ユニット本体にはバネやらついているので、ここで下手にバネを飛ばしたりしないように注意すること。ここまで分解すれば十分だ。写真.の、円形の中に長方形の穴があいているユニットが問題の連動ピンの折れた連動機構である。

破損した部品のとりはずし

ここまで分解すれば遮光板ユニットから破損した部品をとりはずせる。下の写真では外した部品が分かるように、部品をずらして置いている。

破損部品

破損部品の拡大写真である。長方形の枠の左側下から1/3程度の部分の光沢のない黒い四角がピンが折れた後である。ピンが折れた部分で接着することも試みたことがあるが、なかなか強度がでない。そこで、ここの部分に適当な金属棒をつけることにした。直線的な金属棒だと強度的に不安があるので、皿ネジの適当なものを付けて全体をエポキシ接着剤で固定することにした。

センターポンチで穴をあける

 金属棒を固定するため穴の位置をきめるために、センターポンチをあてて軽く叩いてドリルのガイドをつくる。

ドリルで穴をあけた後

ついで、使うネジのサイズに合わせて穴をあける。皿ネジを使う場合は、ネジ径で貫通する穴をあけた後に、さらに部分が入るように大きめのドリルでくぼみをつくる。油断していると、この時にドリルが食い込んで大きな穴となってしまうことがある…。実際に、大きめの穴をあけてしまって焦ったのだが、ネジの皿部分がかろうじてとまるものだったので、皿ネジを後ろからテープで留めて、貫通穴の空間はエポキシ接着剤で埋めることとした。

ネジをとりつけた

部品にネジを取り付けた状態。ここでは、ネジの長さは適当にしている。この後、最初のプラスチックパーツの長さに合わせてネジの尻尾を切り(ニッパーを使った)、端をヤスリ丸めた。これは、表面だが、裏面の方は遮光ユニットの部分と接するので後ろが出っ張っていると動作がおかしくなる。よって裏面は出っ張らないように注意すべし。

完成図

分解の逆の手順で組み上げる。壊れた部品を遮光板ユニットに組み込むときに、連動する溝がきちんと入っているか注意すること。溝に入っていないと、連動ピンの部分を動かしても遮光板が開かないので直ぐにわかる。また、連動ピンがあるべき位置にないので、外から見ても直ぐに分かる(これが、クレームをつけた修理未完了の状態だった。)。

遮光板ユニットを取り付ける時には、ケーブルに気をつけること。ケーブルを挟み込んでしまうと、ケーブルを切断する危険性があるだけでなく、フィルム面からマウント前面までの距離が狂いピントが合わなくなる。

ネジは丁寧にしめること。

必要な工具と時間

 今回のカメラ修理に必要だった物は

であった。ドライバーは普通のサイズのものよりは、精密作業用のものの方が使いやすい。今回はpb社の差し替え式の物を使った。結構便利である。

2003年7月一部改訂(外すべきネジの数を5本から6本とした。再度分解したときにチェックしたら6本だった。)

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