ガラス玉・水晶玉・サファイア玉・サファイア玉の区別

 ミネラルフェアーにいったら、大阪の鉱物屋さんが円偏光板を使って右水晶と・左水晶が区別がつくというデモをやっていた。見て感動して、それから、自分で水晶玉を買って試してみたあげくに、人に見せて回りたくなり、Webに載せることにした。
 水晶玉とガラス玉の区別については、既に
http://kgeopp6.s.kanazawa-u.ac.jp/~ishiwata/crystal.htm
や(こちらには、その後、円偏光を使った話が加わっている)
http://www.shiojiri.ne.jp/~jwlbox/m_cb.htm
などがあるのだけれども(どうも、こちらはリンク切れになっているけれども、新たなリンク先が分かるまではこのままにしておく)、円偏光板まで使っているのはなさそうなので、まあ、オリジナルではないけれども、紹介する価値があるかなぁと思っている。
 サイトを書き始めてから、学生実験のネタに使える気がしてきて、文書がそっちの方向にいってしまった(^_^;)。さらに、正直に書くと、まだ、ちゃんと、考えてない/試していないこともあり、とりあえずの不完全版という状況だ。


用意したもの(するもの)

  1. 水晶玉。直径1cmのものを1個100円で6個ほど買った。(これらすべてが同一の旋光性を持つ可能性は1/32である。)
  2. ガラス玉。直径1cmのものを2個。ガラスに歪があると反射による偏光の乱れのみを観察できないので反射の効果のみを見たい場合は光学ガラスを研磨したものを購入する必要がある。今回は光学ガラスを研磨した物(2種)とビー玉を用意した。
  3. サファイア玉。直径6.25mmのものを一つ。1cmのものを探したがカタログになかった…
  4. アクリル玉。直径1cmのものを3個。1個でよかったけれども、3個一組で売っていた
  5. 偏光板(直線と円の両方)
  6. ライトボックス(写真用・可能なら単色のものが欲しい)
  7. 球の台座となるワッシャーとかナット

光学的に等方的な球体と1軸性の球体の違い

ガラス球の観察

ライトボックスの上に偏光子(直線)を置き、その上に球をのせる。この時、球がころげないように、必要なら適当なドーナッツ型の台座を使う。(今回はドーナッツの替わりに、光学実験につかうマウントポストホルダーの止め金具を使っているが、あまり具合がよくない。)さらに上に偏光子をクロスニコルに設置して(何もおかないと光が透過しないようにする)上から観察する(この時、球が小さくて観察しにくい場合には拡大鏡を用いる。)


図:マウントポストホルダーの留め具の中にガラス球をいれている。ネジで止めて、留め具を回転すると中のガラスも回るようにした。この写真は、下部の偏光板のみで上には偏光板を置いていない。



図:上部にも偏光フィルターを入れてクロスニコル状態にした。左の暗い写真は光学ガラスを丸く研磨した物。真中の写真は380円/沢山個で売っていたビー玉。いずれもクロスニコル条件で露出条件は同じであり、実際にもビー玉の方が明るく見える。さらに注意してみると、ビー玉の方は周囲は黄色っぽく着色している。ビー玉について、上のフィルターを90度回したのが右の写真。明暗が入れ替わっている。このことから、ビー玉で光が透過するのは複屈折によるであろうことが推測できる。


問:ガラスは等方的な物質なので、ガラスを透過することにより偏光状態が変わることはないはずである。それにもかかわらず、光が透過(すなわち、偏光状態が変化する)する領域が出現する理由を述べよ。


図:2種類のガラス玉。左のガラス玉と右のガラス玉で屈折率が異なっている(片方はBK7で1.517,もう一方はS-LAH79で2.003)。右側のガラス玉で4すみ以外に光もれが生じているのはほこりがはいったため。


問:右と左の写真で、どちらのガラスの屈折率が高いか。その理由は何か。


(解説へのリンク(予定))


アクリル玉の観察

アクリルは高分子の一種である。高分子の分子鎖自体は分極率に異方性があるが、それが、方向性なく集合していれば、巨視的には光学的に等方的になるはずである。そうなっているのか、実際に確かめてみよう。


図:アクリル球。左側はガラスと同じように4カ所のみ明るくなっているが、右側は全体に明るく見えている。


図に示したように、アクリルはガラスと異なり、球の方向を変えると全体に明るくなるようになる。(と、書いてしまうと正確ではない。正確には、アクリル球を回転により明暗が変化するように調整してセットして撮影していると記すべきだろう。では、違う方向にすると、どうなるだろう。)


問:アクリル球を用意して(アクリルはどこで購入したかによって観察結果が異なるかもしれません。まあ、逆に言えば、正解のない問になっているので、よくお楽しみ下さい。また、アクリル以外(例えば歪みのあるガラス玉)でもよいかと思います。)偏光板に挟んで観察せよ。観察結果を箇条書きでまとめよ。


図:アクリル球。上の写真とは、アクリル球の方向がほぼ90度異なっている(水平だった面が垂直面になっている)。この状態でアクリル球を偏光板に垂直な軸回りで回しても明るい方向は変わらない。(クロスの形は多少は変わっていく)。明るい領域の出現する方向は変わっていないが、明るさは上の写真と比べるとはるかに明るくなっている。このことは、上の写真と下の写真で明るい領域が出現する理由が異なっていることを示している。


サファイア球の観察

次に、光学的に異方性のあるサファイアの球で同様のことをしてみよう。すると、ガラスの場合とは次の点で明らかに異なっている。


図:サファイアボールを回転している。左上から面内でボールが回転している。ノブの方向が最初と最後で約90度回転している。最初と最後で4方向に明るい領域が見える。途中の状態では45度回転している状態が一番明るく見えている。


図:サファイア球。直交ニコルに挟んで回していると、黒い十字線が1カ所にあつまる「おへそ」が見付かる。おへそをほぼ真上に持ってきた。おへそからでている黒い帯は面内で球を回しても動かない。おへその回りの模様のピントは球の中心とずれている。左側ではピントがぼけているが、2番目はピントがおへそにあわせた。中央部のみを拡大したのが3枚目の写真。リングは黒ではなく、色が着いている。


問:サファイアで、方向により回転により明暗が変化する理由を説明せよ。また、上の写真のように「おへそ」が見える理由と、4方向に黒い帯が出て、また、黒い円が見える理由を説明せよ。


解説へのリンク(予定)


この写真は白色光源を用いている。へそから4本の暗い領域が周囲に拡がっていく。同芯円状の着色した紋様が見られる。一方、単色の光源を用いて観測すると同心円は濃淡のパターンとなる。単色光を使った状態で、検光子を90度回転すると明暗が入れ替わる。一方、ガラス玉の場合は検光子を90度回転すると全体に明るくなってしまう。

図:単色光で見たサファイアのへそ。右は拡大。単色光源の作り方については、別項参照。


水晶球の観察

続いて、水晶球を白色光源で観察してみる。すると、状況はサファイアの場合と似ているが、大きな違いが一つある。へそが暗くならないのだ。へその色は、球のサイズによって変わるはずだが、今使っている球では緑っぽく見える。4本の暗い領域はサファイアの場合と同様に観測されている。



図:クロスニコル(左)とパラニコル(右)でみた水晶のへそ。サファイアと異なり、真中が黒くはならない。クロスニコルでは黒で、パラニコルではピンクっぽくなる。


続いて、単色光で観察する。へそは明るくなっている。しかし、検光子を回転すると、ある角度でへそは暗くなる。ただし、回転角は最初から90度ではない。これから、水晶には直線偏光を回転させる能力(旋光性)があることが分かる。


図:単色光でみた水晶。クロスニコルだと、へその真中は明るくなる。それから、約90度検光子を回すとへそは黒くなる。


円偏光板を用いた観察

 下の偏光板は直線偏光板のまま、上の偏光板を円偏光板に換えると同芯円状の紋様は渦巻きに変わる。


図:下は直線偏光、上は円偏光板で観察した水晶玉。渦巻き模様が見られる。


ここで、円偏光板についての知識がある人は、右・左のどちらの円偏光板を用いたのかが気になるだろう。また、水晶に右水晶と左水晶があることを知っている人は、どちらの水晶なのかが気になる所だろう(両方の知識がある人は両方が気になるわけだ。)。そこで、ここでは、右と左の水晶で同じ円円光板でどのように見えるかを示すことにする。


図:右水晶と左水晶。どちらが、どちらかは…不明。


問:円偏光板でみると、なぜ渦巻きになるかを説明せよ。また、円偏光板を逆のものに換えたら見え方がどうなるかを予想せよ。


解説へのリンク(予定)


蛇足:SiO2には細胞毒性があるそうだ。実験的には結晶のSiO2(すなわち水晶)と非晶(アモルファス)のSiO2(これは石英ガラス)ではアモルファスの方が毒性が低いので、結晶構造に原因があると考えられているそうだ。この話を聞いて、「右水晶と左水晶で毒性に違いはありますか」と尋ねたのだけれども、左右の差以前に、どの結晶面で毒性がつよいかもまだ判っていないのだそうだ。
毒性といってもミクロな話なので、水晶玉を撫でていると健康に悪いといったことはないと思う(^_^)。

展開予定:屈折率をマッチさせた液体中での様子。撮影に関する話題(映り込みをどう避けるか)。反射による変更の乱れの定量化(光線追跡の結果)。照明を平行光線にした場合。など…

TOP私家版実験講座 - ガラス玉・水晶玉・サファイア玉・サファイア玉の区別