ピンセット使い勝手メモ

 いろいろなピンセットメーカーがある。それぞれのメーカー毎に、同じような形態のピンセットが販売されているのだけれど、それぞれの価格は随分と異なり、それにともなって使用感も異なっている。高価なスイス製ピンセットの方が、類似形の安価な品より使いやすい気にはなっているのだけれど、それが、単なる気分の問題なのか、それともきちんとした理由のあることなのか、まずは確かめてみようと思った。こんな暇なことをやり始めたのは、安価な品に手を加えて高価なピンセットの使い心地を実現できたら、ちょといいなと思ったからだ。

 比較は、いわゆるNo.5系のピンセットで行った。そのために買い込んだのは(元から持ってた物もあるけれど)次のピンセットである。なお、重量はキッチン秤を使っており精度は2gである。閉じるのに必要な加重は、秤の上にピンセットを置き、上から一方をおしてピンセットが閉じたときの重量を読み、そこからピンセット自体の重量を引いている。誤差は、測定の感じからは10g程度はあると思う。

会社 型式名(購入価格) 全長(mm) 重量/閉じるのに必要な加重(g) 

Dumont No.5(在庫品:3-4000円)  109 12/130

Anex No. 145(1008円)  111 13/200

TAMIYA 精密ピンセット 74048-1200(1260円) 119 20/200

allex P-2p(997円) 116  10/190

KFI K-23(アルミ製) (861円) 119 6/80

これからすると、重量的にはアルミが軽く、続いて、Dumont、allex、Anexが同程度、TAMIYAがそれより少し思い感じである。一方、挟むのに必要な力はアルミが軽く、続いてDumont。残りの2つはおよそ同程度である。

精密作業用のピンセットは、バネが弱い方が使い勝手がよいと言われている。それからすると、上のピンセットの中で一番使い勝手がよいのはアルミ製のピンセットということになる。ただ、アルミピンセットは持ち手部分のエッジの角が落としていないので、手持ち感が今ひとつ良くない。また、使っていると、左右の剛性が低いように感じる。ピンセットを使うときに単に押す力ではなく、左右にずらすような力をかけてしまったときに、容易に刃先が左右に食い違ってしまうのである。アルミ製のピンセットは、剛性を高めるために、他のピンセットに比べると、板の幅(厚さではなく)が広いのだけれど、それでも、剛性が不足しているようである。ちなみにDumontの品はアルミピンセット以上に左右の力をかけても、刃先はずれてこない。

allexのピンセットも剛性が不足している。このピンセットは意図的に左右の力を加えなくても、空の状態で刃先を合わせて少し力を入れると“ギリッ”とした感覚がある。先端を合わせたときの様子を観察すると


allexピンセット先端部:先端まで四角い形状。合わせたときにずれがあり、力を入れると食い違いが生じる。


ご覧のように、合わせた時点で少しずれがあり、強く押さえると先端が食い違ってしまっている。これが“ギリッ”感の原因である。気をつけて押さえれば、ずれなくても済むのだけれど、少し油断をすると上の写真のように食い違いを生じてしまう。allexの製品を見てみると、他の製品に比べて、横幅が少し狭い。これが、横剛性が足りない理由であろう。

先端部に着目すると、品により違いがあることが分かる。

アルミ製ピンセット:力を入れると先端が開いてしまう。また、先端まで角のままで脇の磨きも甘い。

田宮製ピンセット:先端まで角のままになっている。先端の角度がつけたところで浅い。力を入れると先端がわずかに開く。

アネックス製ピンセット:先端まで外側は丸くなっている。力を入れてもほとんど先端は開かない。

Dumont製ピンセット:アネックスと同様に先端は外側は丸く磨かれており、細くなっている。力をいれても先端は全く開いていない。


先端に随分と違いがあるので、他の部分も子細に眺めてみると、微妙な形態に違いがあることが分かる。大体のピンセットは、根本付近は薄く、持つ部分は厚くそして、先端は再び薄くなる。

根本部分の厚さを計測すると
Dumont-1.3、Anex-1.4、TAMIYA-1.7、allex-2.2、アルミ-1.7である。一方、持つ部分の厚さは1枚あたり、
Dumont-1.9、Anex-1.4、TAMIYA-2.1、allex-1.3、アルミ-1.4
となっている。
Dumontの根本部分が薄いことがバネの柔らかさをもたらしている。一方でDumontは押さえる部分が厚くなっており、これによって剛性を確保しているようだ。また、根本部分の長さが他の品に比べて長くなっており、ここでも横方向の剛性を稼いでいるようだ。

結論としては、高価なピンセットと、そこそこの値段のピンセットの間には(それが値段の差に見合っているかは別として)、形状の違いがある。高価なピンセットは根本部分がより薄く、押さえる部分がそれに対して相対的により厚くなっている。その形状ゆえに、製作コストは他のものよりは高いことは推測される。

では、そこそこの値段のピンセットを改造して高級品にできるかというと、Anexのピンセットの根本を先端をもう少し薄くすれば使い勝手は似たものが出来るかもしれない。また、TAMIYAのピンセットを本気で削れば、そこそこの線までいくかもしれない。でも、いずれにせよ、工作にかかる時間を考えると、もとはとれない気がする……………。

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