平均的なレベル
とある真空機器メーカーの営業の人から「最近は東工大の○○学科あたりでも、学生さんはコンピュータを使ったシミュレ ーションは上手でも、実際に真空装置を扱えなくなってますねぇ。」と言われたことがある。○○学科ではないが、学生さんが平均として装置や道具を扱えなくなっているのを感じていた身としては、外から見ても分かるレベルにまでなったかというのは、ちょっとしたショックだった。
装置や、道具を扱うことは研究には直接関係ないといえば、それまでだけれども、それなりに装置を使いこなしてこそ実現できるようなことも多々ある。身近に職人芸をもった技能者がいて装置の面倒を見てくれればいいのだけれど、そうではないのが日本の現状。レベルはともかく、自分でそれなりの技能を持たないことには、研究を満足に進められないと思う。で、その技能のレベルが下がっているということは…、研究基盤に問題が起き始めているということになる。
装置や工具の使い方は、基本的にはその場で教えるしかないものだ。だが、予備知識がない人が対象では効率はよくない。いくつか、工具の本もあるけれど、必ずしも研究室の実情にはあっていない。というわけで、このWebを作ることになった。
 
 
英語の表記
Webのlogを見ると、検索エンジンから飛んで来た時に、どのようなキーワードで検索をしているかを調べることができる。そんな中に「六角レンチ 英語」というキーワードがあった。六角レンチの英語名称を知りたかったわけである。六角レンチくらいなら、googleからやってくるより、ネットで英辞郎でも引く方が早いんじゃないかと思うのだけれど、確かに、英辞郎を見ても出てこない言葉もある。また、多くの工具は、なまじカタカナの名称だったりするために、それが日本ローカルな名称であるとは知らなかったために、国外で発音だけ本場風にしたけれど、通じなかったという話が結構ある。で、なるべく英語名称を記載しようと考えた次第だ。英語名称は基本的には欧米の工具メーカーの英語版カタログで調べている。また、googleで検索をかけて、英米のWeb上での用法数を確認したりもしている。調べてみると、名称には分布がある。従って、ここで掲載した英語が必ずしも通じない場合もあるのではないかと思うが、それはご容赦頂きたい。
 
工具マニアは対象としていない
工具マニアの方はネット上に、ここより参考になるサイトがいろいろとあるので、自分でそれを発見してご覧頂きたい。また、ネット掲示板で議論を戦わす時に、このサイトの内容は引用しないようにお願いする。特定メーカーの工具を薦めている部分もあるけれど、それは極めて限られた特定の用途や条件において、その工具が優位性を持っていると考えていることを示しているのであって、その工具が一般的に優れていることを示す物ではない。このサイト内での説明写真に写っている工具についても同様で、それが写っているのは、手近にあったからで、それ以上の意味はない。
 
形状によりいくつかの種類
英語版Wikipediaによるとネジの頭には
Pan head:鍋ネジ 頭頂部は平になっている。
Button or dome head コバがあり頭頂部は丸くなっている
Round head 丸ネジ:コバがなく全体が丸くなっている
Truss head トラスネジ 丸ネジより薄くて頭が大きい
Flat or Countersunk head 皿ねじ 頭は平で下面は平でなく円錐
Oval head 下は皿ねじ、上は丸ネジに近い形状
Cheese head 円筒状で頭は平面、高さは直径の半分程度の形状
Fillister head 円筒状で頭がわずかに凸面になっている。
Socket head  円筒状で、頭には六角レンチ等の穴が開いている
などがある。
それなりに固定
1/4の穴にM6をねじ込むと1~2回回転したところで、それ以上ねじ込めなくなる。つまり、一見固定したかに見えてしまうのだ。この状態で固定できたと判断してしまう人が結構いるようだ。また、1/4の穴の材質がジュラルミン系のように鉄に比べて柔らかい材料だと、力を入れてねじ込むと1/4の穴が変形してそれ以上にねじ込めてしまうことがある。いずれにせよ問題は、ネジが完全にネジ込めていないのに力がかかるようになることを無視していることである。ネジは、基本的には雄ねじネジの座面がねじ穴について本体に張力が働くようになるまでは、回すのに力がいらないはずのものである。ここで、力が必要だと言うことは何かがおかしいと言うことである。隙間が残っているのに、力がいるようになったら、ねじ込み作業を中止してピッチがあっているかとか、ねじ山が潰れていないかを確認しなければならない。
それにしても、同じ日に、1/4にM6をねじ込んでいるのを2カ所も発見するとは思わなかった。しかも、片方はミリネジじゃないと注意していたはずなのに……………。
 
旧規格である17が流通している
あるメーカーの営業の人にM10の二面幅って16じゃないの?って聞いたら、そんなに見たことにないと言われてしまった。確かに、二面幅が16のM10のボルトを見たことはない。使っている真空機器でスペースの関係でメガネレンチが入らないので、特製の長いナットを使っているのがある。これなんか、二面幅が16のナットがあれば随分と幸せになれると思う…。これ以外に、自動車関係ではM8の二面幅が13ではなく12のものが多用されており、自動車用工具屋さんでは二面幅が12の工具が結構幅をきかせている。
 
舐めて
業界用語で、ドライバやレンチとネジの頭やナットが滑って、はずみでネジの頭の溝やナットの角を潰してしまうことを言う。
JIS規格では4種類
ドイツ工業規格では00,0,1,2,3の5種類のようである。0と00は1より小さい精密作業用の刃先である。JISでも時計用として別途小さなプラスドライバーの規格がある。
指で回して止まる程度以上に
逆に言えば、指で回して止まる程度にしか締めなくてよく、適合するドライバを捜すのに手間取りそうな場合には適合しないドライバ(マイナスでプラスを締めることもある)を使うこともある。もっとも、こんなことをやっていると、ネジの頭をだんだんと潰していくので、あくまでも緊急的な手段という認識はもっているべきである。他人が見ていない時に、種々の緊急手段を発動するのにためらいはないのだけれども、知識の少ない学生が見ている時に緊急手段を発動すると、それを見た学生が、それを日常手法と誤認する危険性があるので注意が必要である。もっとも、見せなくても、知らずにやってくれていることも多い気もするけれど…。
面接触タイプ
六角を例にとって示すと、ソケットのコマはかつては正確な六角形をしていた。すると、コマとナットは頂点の部分で点(実際には線)で接触し、そこに力が集中し、ナットの破損の出発点となりやすい。そこで、コマの形状を変えて、ナットと頂点のところではない部分で有限な長さで接触するようにしたものがアメリカのスナッポン社により開発された。これが面接触タイプのコマである。このタイプは通常のコマに較べてもう一声トルクがかけられる。スナッポンの特許が生きていた間は、この形状はスナッポン社の製品のみの特徴だったが特許期限が切れてからは雨後の竹の子のように各社一斉に商品化をしており、有名メーカーで面接触でないコマの方が珍しいくらいになっている。ところで、実験室ではどうかといえば、過大なトルクを必要とする機械がないこともあり、特に面接触の物ではなくても問題はないように思う。
メガネレンチも、最近は面接触タイプの物が多いし、通常のスパナでもスナッポンのものは面接触を取り入れた形状の商品がある。六角レンチではWera社が面接触の特許を持っており、それを使った商品がいくつかのメーカーから販売されている。
めがねレンチに較べてナットの頭を潰しやすい
とはいえ、これは、同じメーカーの工具の間での話という脚注をつけるべきかもしれない。聞いた話だけれど、いくつかのメーカーのスパナやメガネレンチのテストをやったら、某社のメガネレンチよりも高いトルクをかけられたスパナがあったという。