松本研究室 東京工業大学 物質理工学院材料系

研究内容
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主な研究内容

ナノファイバーに関する基礎研究と機能創出

細くて長い一次元物質である「繊維」を極限まで細くすることによって得られる「ナノファイバー」は、その直径サイズ、表面積の大きさ、ファイバー内での高分子鎖の配列または閉じ込めに由来する機能の発現が期待されるユニークな材料です。ナノファイバーの新しい機能を創り出すためには、ファイバーの直径サイズ、表面の物理的・化学的な性質、そして内部構造を合理的に設計することが重要になります。
私たちは、ナノファイバー特徴を活かした機能の創出を目指して、以下の基礎研究に取り組んでいます。

  • 高電圧や高圧空気流を利用した紡糸プロセスにおけるナノファイバー形成過程の理解に基づくファイバー直径の制御
  • ナノファイバーの表面・界面現象の理解に基づく機能設計(対象としてナノファイバーネットワークやナノファイバーコンポジットを含む)
  • 分子鎖の剛直性、分子鎖間の相互作用、ナノ材料を利用したナノファイバー内部構造の制御

[代表的な論文]

ナノ材料を利用したエネルギー変換・貯蔵デバイスの開発

ナノファイバーを不織布状に積層することによって得られるナノファイバー膜は、網目(ネットワーク)状に連結したファイバー骨格とファイバー間に形成される相互に連結した空孔構造を持つことから、多孔質材料として利用できるだけでなく、マトリクス材料と複合化することでコンポジットの骨格材料として利用することもできます。私たちは、エネルギーデバイスに利用される電解質材料や電極材料への応用を目指して、ナノファイバーネットワークを利用したキャリア伝導パスおよび化学反応場の構築に関する研究を進めています。

具体的には、金属負極二次電池や燃料電池用電解質膜への応用を目指して、無機ナノファイバーを利用した安定性の高いゲル電解質やイオン伝導性高分子ナノファイバーを網目状骨格とする複合電解質膜に関する研究を進めています。

ナノファイバー膜の構造的な特徴は有機高分子ナノファイバーを炭化処理して得られるカーボンナノファイバー膜でも維持されます。このようなカーボンナノファイバー膜やグラフェンナノリボンシートを、電解液との接触面積が大きく、連結した空孔構造によって電解液の拡散性に優れた多孔性電極材料として利用する研究に取り組んでいます。

[代表的な論文]

ナノ・バイオ材料を利用した新規分離機能材料の開発

分離膜の高機能化を目指した究極の設計指針は、生体における細胞膜を模倣することです。生体膜における水やイオンの輸送はウォーターチャネル(アクアポリン)やイオンチャネルなどのチャネル輸送系を介して行われています。サイズに依存する分子選択性を持つチャネルを人工的に構築し、さらに膜面内に多数のチャネルを配置することができれば、選択性と透過性を独立に制御できる膜設計が可能になります。私たちは全気相重合法を用いた垂直配向カーボンナノチューブ(CNT)アレイ/高分子複合膜の作製法を提案しており、この複合膜を使って、疎水性ナノチャネルにおける物質輸送現象の解明を目指した研究を進めています。

分離・吸着材料はナノ材料の比表面積の大きさを利用できる有望な応用分野です。カーボンニュートラルな植物由来のナノ材料であるセルロースナノファイバーの持つ親水性と形状安定性に注目した吸湿フィルタの開発やロバストなタンパク質多角体(微結晶)のナノ空間を利用したレアメタル回収など、生物由来のナノ材料の利用に関する研究を進めています。

[代表的な論文]

放射光X線散乱技術を利用した機能性高分子材料の精密構造解析

ナノ材料、高分子材料、そして両者を複合した高分子ナノコンポジット材料の機能設計には、精密な構造解析とその結果に基づく物性発現メカニズムの解明が不可欠です。私たちは、広角X線散乱(WAXS)/小角X線散乱(SAXS)/小角X線異常散乱(ASAXS)などの放射光X線散乱技術を利用して、ナノファイバー、ナノファイバーやナノ材料を複合化した高分子材料、高分子膜や高分子薄膜の精密構造解析に取り組んでいます。

[代表的な論文]

デバイス応用とケミカルリサイクルを目指したπ共役系有機材料の設計(芦沢助教のテーマ)

新規π共役系分子骨格の創出と高分子への拡張、伸縮性半導体高分子、自己ドープ型導電性高分子などの研究を行っています。

[代表的な論文]