Frequently Asked Questions

Q:2種類以上の分子の間のオーバーラップを計算するのにはどうしたらいいでしょうか?

A以下のようにして可能です。

@それぞれの分子のextdhを走らせておく。

Ascalで原子座標はそのまま続けて入力。原子数はもちろん合計。

2種類の分子において構成原子種が異なると、extdhのときとは原子種の番号

(何番目)が変わることがある。

B原子番号読み込みの行を

 

  120    2   10   20

 

といったようにする。fort10fort20から2種類読み込む、という意味。

1201番目の分子の軌道数。2番目の方が大きいとうまくいかないかも。

Cあとはfort101番目の分子、fort20を2番目の分子として相互作用を指定。

πd系において有機分子とFeCl4間の重なりを計算するdcalというプログラムの入力例があります。
こちらは余分な1行があり、ちょっと極端な例ですが、参考になるかも知れません。

 

 

Q分子軌道計算extdhがうまく行かないときがあります。

 

Aよくあるのは縮退軌道をうまく対角化できないときで、本来エネルギーの等しいはずのレベルが、非常に大きなエネルギー差で大きなエネルギーと小さなエネルギーをもってしまいます。これは行列対角化のアルゴリズムでエネルギー差が分母に来るような箇所があるため、ときどき起こります。分裂した2つのレベルはEFの下と上に来るので、たいていレベルの順序をひとつ狂わせます。HOMOの隣の軌道を調べるのは、このためです。これは、extdhでは対称性をまったく考慮していないのが原因で、対称軌道を使えばこのようなことはなくなります。逆に言えば、このような間違いが起こるのは対称性の高い分子の場合で、例えばポルフィリンなど4回軸とか3回軸があると危なくなります。ただしこの場合も、x軸とy軸を取り替えるとか、分子を傾けるとかすると解決します。

 

もうひとつはローンペアがフロンティア軌道の近くにあるような場合で、例えばTCNQの計算はとても簡単ですが、DCNQINのローンペアがあるため、正しいLUMOが求まらないことがよくあります。

 

お話のDBTTFなどTTFの入った分子は比較的問題が起こりにくいように思いますが、Sの3d軌道を抜いてみるというのが、まずやってみるべき対策のように思います。

 

もうひとつの対策は、分子軌道計算をMOPACでやってしまうことです。HP一番下のtrex, trpacというプログラムを使います。

 

 

AルブレンやC60の分子軌道がextdhでうまく計算できません。

 

Q:上記のようにMOPACを使ってみてください。

 

 

Qextdh.datscal.datの中身を書き換える際、格子定数などのパラメータ間のスペースにはどのような決まりがあるのでしょうか?スペースの数によって正常に動いたり動かなかったりすることがあります。

 

A:旧式なFORTRANの書式付入力が残っており、使いにくくてすみません。

格子定数は10文字分のなかに入っていればOKです。3.14159なら点も入れて7文字なので、3つ空白を入れてから次の数字を入れます。もちろん、空白は頭にあっても、合計で10カラムの中に上の数字が入っていればOKです。はみ出すと次の数字だとみなされることがあります。マニュアルに6F10.5 とあれば10カラムの数字6個です。整数は5文字のところと4文字のところがあります。5I5 なら5カラムの数字5個、3I4 なら4カラムの数字3個です。

 

Qプログラムでの出力ファイルsdat.d1の中にある積分値SHはどのような関係なのでしょうか。論文等に利用する場合にどちらの値を用いるのでしょうか。

 

Ascalの出力にはSHが出てきますが、Sを使っています。Hはそれぞれの原子についてSIpをかけて足し合わせたものです。論文ではSは×10-3 (無次元)で書いていますが、これに-10 eV (t = ES)をかけたものをトランスファー積分として、こちらを書くこともあります。HはほぼSに比例するはずですが、計算上のいろいろな都合でSの方が信頼が置けます

 

 

Q水素原子のパラメータで1.3が使われております。昔のプログラムで1.0が使われている場合があります。これらは使い分けているのでしょうか。BEDT-TTFのモデル計算でextdhファイルとscalファイルの中で炭素のパラメータが変わっていました(1.6251.625から1.8081.685)。

 

AHは一時1.3を使った人も居ますが、我々は一貫して1.0を使っています。Cはまずいですね。1.625を一貫して使っていたつもりだったのですが。

 

Q現在公開されているプログラムで計算すると以前の結果(文献値)よりも重なり積分が小さい値になる傾向があると思います。

 

A上のようなパラメータの違いがあるかも知れません。

もうひとつ注意しなければいけないのは、水素原子の位置です。構造解析の結果で水素は計算して付けるのですが、そのときのCH距離の設定が0.93 Åになっているプログラムと1.07 Åになっているプログラムとがあります。これでトランスファーの値は明らかに変わります。本当のCH距離は1.07 Åくらいなのですが、HよりもCの方が電子数が12倍も多いので、通常のフーリエ変換で見つかってくる水素のピークは0.93 Åくらいに見つかるので、この値の方が広く使われていると思います。

 

Q中性分子のπスタック構造をしている化合物で10−2乗から10-乗の重なり値はありえる値でしょうか。

 

A:分子のオーバーラップが意外に小さいとか、HOMOがどこかに偏っているとか、原因はいろいろあり得ます。Sが小さすぎるときはHOMOがπ性に正しくもとまっていない疑いもあります。fort.10の係数がs, py, px, pxという順に並んでいますので、大きいところをみるとだいたい分かりますが、HPの一番下のfor MOPACで、extdhHOMOMOPACで描かせて見る、ということもできます。HOMOが正しくないときにも、たいていひとつ上か下に正しいHOMOがありますので、これを使ってしまうという手もあります。LUMOでも同様です。

 

 

Qヘテロ原子の扱いで注意すべき場合はあるでしょうか。例えば、窒素とホウ素原子を含んだ化合物の積分を計算しています。

 

Nにはパラメータに任意性はないと思います。

http://www.op.titech.ac.jp/lab/mori/EHTB/atoms/N.htm

の上の方のを使えばいいと思います。Nの化合物はNの軌道が低いのであまり変なことは起こりませんが、Nの非共有電子対がたまに変なことをすることがあります。DCNQIの計算は意外に難物です。
B
はやったことがありませんが、ζが1.3と馬鹿に大きいのが悪さをするかも知れません。

http://www.op.titech.ac.jp/lab/mori/EHTB/atoms/B.htm

ほとんど金属のようなものですので、有機物に入ったときに、そこにフロンティア軌道が全然行かない

のではないかと思います。それならそれで、あまり問題を起こさないのかも知れません。

 

 

Q結晶性の高い場合のscaltbmapがうまく動きません。

 

A:対称操作が8種類とか入っていると、単位胞中の分子が何倍にもなり、プログラムが動かなくなることがあります。必要最小限にしてください。C面心とかあるとけっこう最悪です。C面心のある単斜晶系(C2/cなど)のブリルアンゾーンはtbmapではうまく扱えないので、三斜晶系に直して計算します。

 

 

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