手段プロセスの検討


反応誘起型相分離




   
重合誘起型相分離(styrene → PS)
 実際に使われている高分子材料の多くは非相溶系のポリマーブレンドです。したがって材料の物性を制御するためには、相分離構造の理解・制御が欠かせません。

 本研究室では、反応誘起型相分離による相分離構造*に注目しています。機械的混練による相分離では多量成分がマトリックス(海)、少量成分がドメイン(島)を形成するのに対し、反応誘起型相分離では多量少量にかかわらず、重合成分がドメインとなる相分離構造を形成します。
 例えばゴム添加による強化を図った場合、少量加えるだけでもマトリックスがゴム成分になることにより、非常に効率良く耐衝撃性を向上させることが出来ます。我々はこの特異な相分離構造の形成メカニズムの解明を行っています。

(注* 反応誘起型相分離:aモノマー中にBポリマーを溶かした状態でaモノマーを重合し、Aポリマーを生成する過程でA/Bの相分離構造を形成する方法。)
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リアクティブプロッセシング

      
Aポリマー/Bポリマー界面付近の様子。化学反応により 形成されたA-Bコポリマーが界面に局在している。
   
PBT/SANおよびPBT/SAN-GMA (70/30)ブレンドの応力-ひずみ曲線

GMA基をもつSAN-GMAを用いることにより破断ひずみが大幅に向上している。
 リアクティブプロセッシングとは、異種高分子を加工中に化学反応を伴う手法であり、ポリマーブレンドの相分離構造の制御に非常に有用です。

 この手法では、混練中に形成された共重合体が界面に局在することで、界面活性剤の役割を果たします。そのため、界面エネルギーが低下し分散相の凝集による粗大化が妨げられ、通常の溶融混練に比べ分散相を微細化できます。
 また、界面接着強度の増大も期待できることから本研究室ではこのリアクティブプロセッシングを利用した機械的特性の向上に取り組んでいます。

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プレス延伸法によるナノ粒子微分散

   
高分子のせん断弾性率と温度の関係
Ref. 片岡紘、豊内薫:成形加工、9、306(1997)
 高分子に充填剤を加えると凝集体を形成してしまいますが、材料の用途によってはそれらをナノサイズで分散させることが必要となります。
 そのための方法は、化学反応を伴う化学的手法と伴わない物理的手法の二つに大きく分類されます。物理的に凝集体を微細化するためにはかなり大きなせん断力が要求されます。

 そこで、本研究室では高分子の成形方法のひとつであるプレス延伸法に注目しています。通常のプレス成形では材料の弾性率が十分に低い溶融状態まで温度を上げて成形を行います。それに対し、プレス延伸法では高分子のガラス転移温度直上において弾性率が高い状態でプレス圧縮力による延伸を行うため、凝集体を微細化することができます。さらに、等方的に延伸されるため、凝集体にはその位置によらず応力が加わり、効率の良い充填剤の微分散化が可能です。
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