2005年以前の成果の中で主要なものを概略と共に掲載しております.(2005年以降の成果は一部のみ掲載しております)

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M e n u
― 小角X線散乱 ―
― 広角X線回折 ―
― 繊維の力学的性質 ―
― 複合材料 ―
― 炭素材料の構造 ―
― その他の研究 ―



小角X線散乱

ボイド・粒子の解析

空間中に分散した粒子や固体中に含まれるミクロボイドのサイズや体積分率は,小角X線散乱を解析することによって求めることができる.等方的に分散している散乱体の小角X線散乱の解析には,GuinierプロットやPorod則が利用されてきた.本研究では,散乱体の分散に異方性がある場合について,散乱体のサイズ,サイズの分布,体積分率を評価する方法を提案した.また,解析に必要な入射X線の絶対強度を,空気散乱から簡便に求める方法も提案した.


fig01

炭素繊維のSAXSパターン



長周期構造の解析

周期構造の乱れは,X線散乱をHosemannの式を用いて解析することによって評価することが出来る.しかし,高分子物質の長周期構造はしばしば著しくブロードな小角X線散乱ピークを与えることから,この式を適用することができない.本研究では,このような小角X線散乱ピークの広がりから乱れの程度を評価する方法を提案した.この方法を用いて,アクリル系炭素繊維製造の一工程である熱安定化過程における構造変化を解析した.



高分子の破壊過程の解析

図はポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムの引張変形過程における小角X線散乱パターンをシンクロトロン放射光を用いて時分割測定したものであり,クレーズの生成を示している.PET繊維についても,引張過程で変化する特徴的な散乱パターンが得られる.これらの結果に基づいて,高分子の破壊過程の解析を行なった.

fig01

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広角X線回折

平面節の積層構造(乱層炭素)の解析

乱層炭素構造では,隣接炭素網面が平面内のシフトと回転を伴って積層している.このような結晶子は黒鉛とは大きく異なる特徴的な広角X線回折パターンを与える.本研究では,層状分子の積層体が選択配向した物質の広角X線回折から構造を評価する方法を提案した.

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繊維の力学的性質

炭素繊維の非線形型応力-ひずみ応答

炭素繊維のヤング率は繊維に付加した応力の増加に伴って増大する.このような非線形応力_ひずみ応答の発現メカニズムを明らかにするために,引張過程における炭素繊維の結晶配向の変化を測定した.褶曲リボンモデル,ジグザグリボンモデル,直列モデル,直列回転要素モデル,並列モデル,モザイクモデルなどの種々モデルに基づいてヤング率および結晶配向の応力依存性を理論的に解析し,実験結果と比較した.炭素繊維の非線形応力_ひずみ応答は,引張応力の増加に伴って結晶変形が拘束されていくことに起因すると結論した.



炭素繊維の軸方向圧縮特性

炭素繊維はその優れた引張強度に比較して軸方向の圧縮強度が著しく低いことが応用上問題となることがある.そこで,炭素繊維の単繊維を直接軸方向に圧縮することによって圧縮強度を評価した.炭素繊維の軸方向の圧縮強度が炭素網面の座屈によって決まると推定し,圧縮強度をミクロボイドのサイズの関数として理論的に導出した.


炭素繊維の繊維軸方向圧縮機構を検証するために,圧縮変形過程における炭素繊維のSAXS・WAXD測定を行い,炭素網面積層体及びマイクロボイドの構造変化を捉えた.マイクロボイドの長手方向の長さの減少は繊維の圧縮破壊ひずみに比較すると大きく,炭素繊維内の応力伝達が並列モデルよりも直列モデルに近い力学モデルで表現されることを示唆している.これは炭素網面が座屈して炭素繊維が圧縮破壊するという破壊機構と矛盾しないことがわかった.



炭素繊維の半径方向圧縮特性

図は直径数μmの炭素繊維を横方向に圧縮した場合の断面内の応力分布をSEM観察及びFEM解析によって求めた結果である.炭素繊維の軸方向の破断伸度は1〜2%程度であるのに対して,半径方向には10%以上の圧縮を与えても可逆的な変形回復を起こす.炭素繊維の半径方向の圧縮挙動を結晶配向との関連で検討した.

fig02

 


炭素繊維の液中引張強度と欠陥解析

炭素繊維の引張強度は液体中で減少することが知られている.種々の液体中の引張強度の測定結果から,液体と接触することでクラック表面の自由エネルギーの低下が強度低下の原因であることを示した.この現象を利用した欠陥解析を行うと,破壊に起因する大きな欠陥が繊維表面に多く存在することがわかった.
また,後述するようにノッチを導入した炭素繊維に引張試験を行い,到達可能強度を算出した.


fig02

 


カーボンナノチューブ撚糸

カーボンナノチューブ(CNT)は著しく高い強度と弾性率を有する材料であるが,サイズが極めて小さいため,実用的な材料として用いるためには何らかの形で集合構造をとらせることが必要である.その方法にCNTを撚糸の形態に加工する方法が考えられている. CNT撚糸の構造と機械的物性の関係を明らかにするために,引張変形過程におけるSAXS測定を行って,引張変形過程における撚糸構造の変化を解析した.モデルを用いた解析結果と比較し,CNT撚糸中のCNTの回転が変形に大きく寄与していることを明らかにした.また,引張強度分布及び,引張変形過程における直径変化を測定した.CNT撚糸の欠陥や撚糸構造,引張特性及びポアソン比と撚り角の関係について検討した.



より糸及びより構造を有する複合材料

炭素繊維やアラミド繊維など種々の引張弾性率を有する繊維のより糸及びより糸/樹脂複合材料について,軸方向及び直径方向の弾性率をより角の関数として測定した.軸方向の弾性率とより角の関係を,繊維の弾性率の異方性を考慮に入れて理論的に導出した.



高分子繊維の欠陥の解析

図は集束イオンビームミリング装置によってノッチを導入した直径約20μmのポリエステル繊維のSEM写真である.種々の深さのノッチを導入した繊維の引張強度を測定することによって,欠陥のない繊維の到達強度や欠陥のサイズを評価した.また,引張強度のワイブルプロットが屈曲を示す原因について考察した.


fig03


繊維の摩擦摩耗特性

高分子繊維の耐摩耗性を増大させるための指針を得ることを目的として,高分子繊維の摩耗率を適切に評価する方法を提案し(wear, Vol.268, pp.1148 (2010)),摩耗が進行する機構をモデルを用いて考察した(Tribol. Online, Vol.6 pp.207 (2011)).この方法で測定された種々の高分子繊維及びフィラー添加高分子繊維の摩擦摩耗特性に基づいて,いかなる材料設計が耐摩耗性の増大に効果的であるか検討した.

fig03

 

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複合材料

力学的性質

炭素繊維複合材料の力学的性質を,理論及び実験によって検討した.一方向繊維強化複合材料の引張強度を繊維の強度分布,繊維の多重破断本数,界面強度の関数として理論的に導出した(Composite Interfaces, 6, 305 (1999)).織物積層複合材料の引張及び圧縮強度を糸の曲率の関数として理論的に導出した(Composites Science and Technology, 64, 2221 (2004)).織物積層複合材料及びフェルト強化複合材料の衝撃後圧縮強度がモードI破壊靭性と相関することを示し,この結果をIlicとWilliamsの解析を用いて論じた(Composites Science and Technology, 64, 2231 (2004)).


フィラーを樹脂に分散させた複合材料の破壊靭性の研究も行った.破壊過程におけるクレーズの生成・成長・破壊挙動をSAXSで捉えることで,フィラー添加による高靱性化を検討した.形状の異なる2種類のフィラー(カーボンナノチューブ,カーボンブラック)を添加した時の破壊挙動の比較を行った(J. Appl. Polym. Sci., 106, 152 (2007)).フィラー添加による高靱性化の効果は試料形態に強く依存することを示した(Int. J. Polym. Techno., 1, 35-41 (2009)).

fig03



摩擦摩耗特性

摩擦摩耗挙動は材料物性のみならず試験速度や相手面粗さなどの試験条件にも影響される.本研究では,摩擦摩耗挙動の速度依存性と材料の粘弾性の関係について実験及びモデル解析に基づく検討を行った.また,モデル中の研摩粒子に関するパラメータを,研摩粒子先端の3D-SEMによる測定結果から見積もり,侵入深さの関数として表現した.

fig05
種々の滑り速度及び相手面粗さの時の摩耗面



フラグメンテーション試験・プルアウト試験

図は引張変形を与えた複合材料内部における繊維の破断を示している.このような繊維細片化過程を解析することによって,繊維と樹脂間の界面せん断強度を評価することができる.この方法は単繊維埋蔵試験,フラグメンテーション試験などと呼ばれている.従来の解析では,繊維破断片長と引張試験によって別途測定した繊維強度から界面せん断強度が求められている.しかし,引張試験によって推定される強度は平均強度であって,単繊維複合材料内の個々の繊維の強度とは異なること,複合材料の成形過程や環境への暴露によって内部の繊維が劣化する可能性があることなどの問題を含んでいる.そこで,繊維細片化過程における単繊維複合材料のひずみと破断点数の関係から,界面せん断強度,複合材料中の繊維の強度,その分布を同時に評価する方法を提案した(Composite Interfaces, 4, 379 (1997)).この結果を用いて,複合材料を熱水に暴露したときの繊維強度と界面せん断強度の変化を解析した.

fig05

 

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炭素材料の構造

温度-時間換算

図は炭素繊維の製造過程における導電率の時間変化を温度ー時間換算を適用して求めた結果であり,例えば基準温度1400℃で200,000年処理する過程における変化を推定することができる.この実験には,2000℃以上の温度に瞬間的に加熱することができる通電加熱処理を用いた.ポリアクリロニトリル,ピッチ,フェノールホルムアルデヒド樹脂系炭素の構造形成の相違,応力の影響,構造形成の活性化エネルギーの温度依存性,物性や構造パラメータに対する温度ー時間換算の適用などについて考察した.


fig04

 


構造,物性,製造方法

ピッチ,ポリアクリロニトリル,ポリオキサジアゾール,ポリカルボジイミド,ポリフッ化ビニリデン,ポリビニルアルコール,フェノール樹脂,フラン樹脂など種々の物質から得られる炭素繊維及び炭素フィルムの構造,物性,製造方法について検討した.
現在は,高配向性黒鉛材料の製造コストダウンを目的として,前駆体ポリマーにフィラーを添加して配向を制御する方法について研究を行っている.



メソポア炭素

通常の賦活処理によって生成する炭素中の細孔は主としてミクロ孔である.我々は,メソ孔を多く含む炭素を製造するために,出発ポリマーの液相脱ハロゲン化水素化処理,ヨウ素蒸気処理,超臨界二酸化炭素処理,気相賦活処理などの種々のアプローチを検討した.また,賦活における細孔形成過程を質量,細孔体積,細孔表面積に基づいて検討した.

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その他の研究

ヨウ素処理PVA

ポリビニルアルコール(PVA)を高温のヨウ素蒸気で処理して得られた材料を,溶媒を含んだアルミナ板上に置いたところ,膨潤・収縮によって自発的にジャンプする特異な現象が見出された.化学エネルギーが力学エネルギーに変換されていることから,この材料の高分子アクチュエータとしての応用が期待される.ヨウ素処理PVAは,大きな膨潤エネルギー,高弾性率(数GPa),耐熱性(約200°C),長い緩和時間などの特徴を持つことがわかった.

その他の研究

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