研究室に興味のある方へ
Home >研究室からのメッセージ
宇宙空間から素粒子まで、私たちの世界のどんなものでも「かたち」をイメージすることは、その本質を理解することと密接に結びついています。また、さまざまな「かたち」と「はたらき」との思いがけない関係を芸術家の天才的な直感は視覚化しています。サルバドール・ダリの代表作・記憶の固執(柔らかい時計)は、常識に反する変形可能な(トポロジー的)世界を柔らかい時計で象徴し、直感の表層をはがして視えてくる「別の真実」のイメージを喚起しています。
私たちは、「かたち」をキーワードとしてマテリアルデザインを新しい視点から展望する研究を進めています。特に高分子(柔らかくて長いひもとしてイメージされるナノスケールの分子)の「かたち」は、トポロジー幾何学を視座として展望すると、思いがけない魅惑的な世界が広がってきます。たとえば、直感的には結び目のひもと環のひもはもちろん「区別される」異なるかたちですが、やわらかい環のひもは、変形して四角や三角にすることができます。この直感に対して、トポロジー幾何学は、結び目と環でさえ、「4次元空間」ではお互いに変形させれば行き来することが出来ると教えています。わたしたちの様々な直観は、しばしば固定観念として常識化されてしまいますが、数学・幾何学からの挑発によってマテリアルデザインへの新たな視点が生まれるかもしれません。
最近、高分子の構造設計の自由度が、連鎖的な一次元的成長(低分子モノマーの重合)で得られる直鎖状トポロジーだけでなく様々な非直鎖(分岐・環)状トポロジーへと拡大し、「かたち」からはじめる高分子のマテリアルデザインが急速に進展しています。したがって、高分子の「かたち」の基本特性を理解することは、新たな視点からの高分子材料設計の基礎としても不可欠になってきました。私たちは、高分子の「かたち」に対する好奇心と幾何学的な概念との出会い・ふれあいを楽しみ、「かたち」からはじめるマテリアルデザインの基礎を拓く研究「高分子トポロジー化学」を発展させたいと願っています。
「トポロジーデザイニング−新しい幾何学からはじめる物質・材料設計−」NTS(2009)、序論より
研究室への入学・進学および見学希望の方は<連絡先>まで。