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高分子について

高分子の歴史

昔、昔・・・

現在はとても身近な高分子ですが、いつ頃からこんなに身近になったのでしょうか。
高分子はいつの時代にも人間の身近にあったのです。ただ、昔は人間が自分たちで高分子をつくる技術がほとんどなかったため、自然が高分子をつくってくれるのを待って(たとえば綿の実がなるのを待って、蚕が繭をつくるのを待って)、それを加工して使っていました。もちろんその頃は、高分子 などという概念はありませんでした。

1920年頃〜

「高分子(とても大きな分子)・・・というものがどうやらこの世にあるらしい」 ということに人が気付いたのは、1920年頃のことです。
合成高分子の歴史はこれより古く、19世紀中頃には、有機化学の発展に伴い、いくつかの高分子が(高分子であると意識されずに)実験室で合成されるようになりました。
初期の合成高分子は天然高分子に比べてそれほど安価ではありませんでしたが、やがて化学工学の進歩と石油化学工業の発展とともに大量生産が可能となり、工業材料として合成高分子は飛躍的な進歩を遂げたのです。(1950−70年代)

大量生産時代(1950年〜1970年代)から現在へ

その頃の合成高分子は、天然高分子の代用品にすぎない面があり、大量生産の時代でした。
その結果、プラスチックの廃棄処理や毒性、あるいはオイルショックによる石油の値上がりなどの諸問題を抱えることとなりました。しかし今日ではこれらの問題の多くは克服され、天然高分子にはない新しい機能や特性を持ちかつ安全な合成高分子の開発が行われています。

合成高分子

合成高分子の紹介

皆さんが日常目に触れるもの、本やテレビなどマスコミ関係で騒がれている材料、さらにはプラスチックという通常の概念からは想像もできないものまで、合成高分子の広がりはとどまるところを知らないかのようです。そのうちのいくつかを紹介しましょう。

まず、情報化社会の花形であるコンピュータの演算速度と記憶容量を上げて高性能化をはかるために用いられる半導体素子の超微細加工用レジスト材料として様々な高分子が活躍しています。光機能性高分子の分子設計なくしては、コンピュータの進歩はありません。
また、光通信システムを支える通信媒体としての光ファイバーや光導波回路部品、情報化社会の進展に伴いその重要性が増しているマン−マシン・インターフェイスとしてのディスプレー装置用の液晶表示システムや電圧、電流による可逆的な発消色現象を利用したエレクトロクロミック表示用材料としても、高分子材料は期待されています。
超LSI




超LSIの40nmのパターンを形成するフォトレジスト

金属材料も凌ぐ高分子材料

プラスチックというと、軟らかい、壊れやすい、土に戻らないのでゴミになる、電気を通さない、などの性質が頭に浮かぶかもしれません。
しかし現在ではこれらの「常識」はことごとく覆されています。例えば、高強度・高弾性材料として、防弾チョッキなどにも用いられる軽くて強い全芳香族ポリアミド“ケブラー”をはじめとして、金属材料も凌ぐ高分子材料が多数開発されています。
テニスラケット






高強度・高弾性繊維で補強された テニスラケットとゴルフクラブ

電気を通す導電性高分子(ポリアセチレン)

また、電気を通す導電性高分子(ポリアセチレン)の合成は、東工大の先輩である白川英樹博士(筑波大名誉教授)が東工大の助手時代に、世界で初めて成功しました。ノーベル化学賞に輝く研究につながったことは、我々後輩にとっても大変に喜ばしいことです。
今では電線に使われている銅に匹敵する導電性ポリマーも開発され、話題の超電導性を持つポリマーも発見されています。強誘電性を持つプラスチックが見出され、また、圧電効果や非線形光学効果が観察され、未来の機能性材料として注目を集めています。
透明電導性フィルム






可溶性の電導性高分子を表面に塗布した透明電導性フィルム

21世紀は高分子の時代

人工心臓、血管などの生体適合材料、無機や金属との複合材料、印刷用感光性料、おむつ用の高吸水性ポリマー、瞬間接着剤、酸素富化膜などの分離膜等々は、まさに合成高分子の独壇場となっています。
また、生分解性プラスチックの開発も年々進んでおり、一部実用化されるに至っています。高分子材料の加工技術も、極々細繊維、多孔膜、超薄膜など、従来夢とされてきた分子レベルの大きさに近づきつつあり、将来の高機能、高性能材料設計の一翼を担うことでしょう。
この様に、皆さんの21世紀はまさに「高分子の時代」と言うことができるのです。 ハイテク






超極細繊維やハイテク繊維(新合繊)の電子顕微鏡写真(断面形状に注目)