ハイパーブランチポリマー
「リビングラジカル重合によるハイパーブランチポリスチレンの生成反応論とナノシリンダーへの応用設計」
ハイパーブランチポリマーはランダムに分岐した高分子であるが、その分岐の度合いは分岐度(DB)というパラメーターで一般に示されている。すなわちDB=0が直鎖状の高分子であるのに対し、完全に分岐したデンドリマーはDB=1となる。本研究ではNMRなどの直接的な測定ではなく、その生成過程での反応速度論からこの分岐度を決定した。
前述のイニマー1から合成されるハイパーブランチポリマーの重合活性点(DC基)は下図に示すように主鎖方向と側鎖方向にそれぞれ存在する。これらのDC基からの重合速度定数をそれぞれkpA、kpBとすると、その反応性比から分岐度が求められる。本研究ではそれぞれのモデル化合物を合成し、速度定数を決定した。kpAではエチルベンゼンのα位にDC基が結合した1-(N,N-ジエチルジチオカルバミル)エチルベンゼンを、kpBではベンジル位にDC基が結合したN,N-ジエチルジチオカルバミド酸ベンジルを光重合開始剤とし、その分解速度を求めた。ラジカル捕捉剤であるTEMPOを任意量入れた系においてジラトメーター法によりその誘導時間を求め、分解速度を決定した。
このような測定法により決定された反応性比と転化率から、Mullerらが示した理論式より分岐度を計算したところDB=0.31と求められた。

次にこの合成法の応用としてナノシリンダーの合成を試みた。DC基はUV照射や高温では可逆的に解離しラジカルを生成するが低温中、遮光条件下では活性が低い。そこで低温フリーラジカル開始剤としてV-70を用い、35℃、遮光条件でイニマー1を重合することによりナノシリンダーの主鎖骨格となる直鎖状ポリマーを得た。このポリマーは重合開始能を持つDC基をもつのでこれを多官能性開始剤とし、イニマー1を今度はUV照射下で重合することにより主鎖からハイパーブランチポリマーが成長した構造のナノシリンダーが合成された。
このナノシリンダーは光散乱測定、X線散乱測定、TEM観察などによりその大きさが決定され、断面の直径がおよそ13.6nm、長さが88nmの剛直ロッド状であることが確認された。この合成法では、一段目の遮光条件の重合を制御することでナノシリンダーの長さが、二段目のUV照射による重合で断面のサイズがそれぞれ制御可能であり、任意のナノシリンダーの合成が可能である。またこのナノシリンダー表面にはDC基が存在するため、さらに表面の官能基化や表面からの重合といった応用も可能であり、とても有用な合成法であると考えられる。
(ナノシリンダーの合成と応用に関してはポリマーブラシも参照ください)

Ishizu, Koji; Ohta, Yoshihiro; Kawauchi, Susumu. Kinetics of Hyperbranched
Polystyrenes by Free Radical Polymerization of Photofunctional Inimer.
Macromolecules (2002), 35(9), 3781-3784
Ishizu, K.; Ohta, Y. Architecture of nanocylinders with hyperbranched polymer
side groups via living radical mechanism. Journal of Materials Science Letters (2003), 22(9), 647-650.
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