学問としての高分子科学・高分子工学
注目の研究対象「高分子」
天然高分子や合成高分子は、とてもおもしろい特異な性質を示します。これは高分子が非常に大きな(長い)分子なので、あちらこちらで折れ曲がったり、からみ合ったり、引っ張り合ったりするからです。このため、低分子には見られない化学反応や物理現象が高分子では起こります。
このような反応や現象は、従来の反応化学や物性科学の範囲ではなかなか手に負えないため「高分子科学」という新たな研究分野で解決しなければなりません。従って、高分子科学は、化学的アプローチと物理的アプローチの両側面を持つ学問となっています。
近年では、コンピュータや物理学、数学の進歩によって、複雑さ故に特殊な現象が起こる高分子の分野は、物理学などの基礎学問分野の人たちにも大いに注目されています。また、高分子の材料としての価値の高さから、製造業の人にとっては、高分子は素材研究の上で避けて通れない分野であり、ますます広い分野の人たちの研究対象となっています。
東工大の高分子工学科
歴史ある学科、専門分野を探究する魅力ある各研究室
東工大の高分子工学科は、複雑怪奇でそれ故に魅力的な“高分子”に関するエキスパート(技術者、研究者)を養成するために、1962年(昭和37年)に創られた学科です。
学科創設以前にも東工大にはたくさんの高分子関係の講座がありました。しかし、一般社会で高分子の重要性が増すにつれて、それまでの、繊維や有機化学の一部という狭い視点ではなく、高分子としての幅広い視野が必要となり、高分子工学科が創設されました。
平成11年度の大学院重点化に伴う組織換えにより、高分子工学科は有機材料工学科とともに大学院として理工学研究科有機・高分子物質専攻を新たに発足させました。また、その前年には、他の化学系、材料系の学科とともに理工学研究科物質科学専攻の設立にもかかわっています。
その結果、全ての職員は組織上大学院(有機・高分子物質専攻および物質科学専攻)に所属し、高分子工学科を兼任するという形にはなりましたが、学部の教育システムに変更はありません。
現在、高分子工学科は20人の教員(教授6、准教授7、助教7)で構成され、日本の高分子教育、研究の分野で重要な地位を占めています。各研究室の研究内容は、研究室紹介に詳しく書いてありますので、参考にして下さい。
本学科の卒業生は、平成26年3月をもって、学部約1450人、大学院約1150人に達し、学界、高分子産業を中心とした各種業界において、幅広く活躍しています。